2016年02月03日
「ブラック企業」対策の目玉(通称・かとく)
昨年4月に東京労働局に新設された「過重労働撲滅特別対策班」(通称・かとく)
政府がいわゆる「ブラック企業」対策の目玉として、東京労働局と大阪労働局にそれぞれ労働基準監督官のエキスパートを集めてつくった専門チームが、少しずつ違法労働の摘発に動いている。
「かとく」は初の事例として昨年7月に靴の専門店チェーン大手ABCマート、2例目として同8月に大阪の外食チェーン「フジオフードシステム」の過重労働について、会社と現場責任者などをそれぞれ書類送検された。その後、3例目以降としてゼンショーの子会社、激安量販店「ドン・キホーテ」の違法な長時間労働で摘発が報じられている。
ゼンショーといえば、「すき家」などの外食産業を運営する持ち株会社。
送検されたのはうどん店「久兵衛屋」や「北海道らーめん 味源」などを運営する「エイ・ダイニング」の元社長(38)ら2人。昨年4月1〜28日に川崎市内の店舗で20代の男性アルバイトに110時間の残業などをさせた疑いだ。同社はゼンショーの完全子会社である。
「男性は長時間の残業とは別に、4週間のうち休日に28時間働かされた。その結果、1カ月で1回しか休日をもらえなかったのです。これは労働基準法35条の“4週間に4回休日を与える”という規定に違反。また、休憩も与えられず16時間働かされたそうで、これは同法34条に抵触」。
1月28日に激安量販店のドン・キホーテの執行役員の男性ら8人と法人としての同社を書類送検した。
同局過重労働撲滅特別対策班によると、2014年10月〜15年3月、都内の町屋店、荻窪駅前店など5店舗の契約社員、正社員の20〜50代男女6人に労基法の上限の「3カ月120時間」を超える労働をさせていたという。最長で3カ月間に415時間45分もの時間外労働が明らかになっている。
親会社のドンキホーテHDは「労務管理に関する指導が不足していた」と反省コメントを出しているが、労働基準局関係者の間では、10年以上前から“要注意”企業だった。
上場している大手企業が「かとく」に摘発されている。
日本取引所グループで上場審査概要の中で、上場審査の内容として、東証などの一部・二部の市場では『コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること』という項目を含んでいる。マザーズではやや緩やかな表現となるが、『コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること』としている。
これらに含まれるコンプライアンスの中でも、労働関連法規の遵守は、近年特に重視される傾向にある。
取引所による上場審査の前に、主幹事証券会社による引き受け審査の段階で労務管理の問題が発覚すると、経営状況がよくても、上場の遅れや上場のストップに繋がりかねない。
上場するにはかなりの厳しい審査を受け、社会的にも責任を負うわけだ。
刑事罰に該当するような違法行為をすると信頼を失墜し、倒産の可能性だって否定できない。
そこまでするか、という問題になるだろう。
「ブラック企業」のレッテル貼られないために
従業員に過重な長時間労働を強いたり、そのうえで残業代を支払わなかったりするような違法行為を繰り返している企業は、相変わらず後を絶たない。
ABCマートやフジオフードシステム、ドン・キホーテなど全国展開している。また、株式を上場している大手企業でさえ、そうなのだから大手に比べて経営体力の劣る中堅・中小企業では、もっとひどい例もあるかもしれない。
そのような企業では、商品・サービスの提供を顧客が敬遠する「顧客離れ」が発生する。
また、従業員の退職が増加し、新しい人材を募集しても集まらない「従業員離れ」も起こしてしまう。
その結果、「ブラック企業」とのレッテルを貼られた企業は、今までのような経営ができなくなるという大きな「社会的制裁」を受けることになる。
ルールを逸脱した経営は企業にとっても従業員にとってもメリットがないのである。
違法な勤務を強いる企業では従業員のモチベーションが低下し、従業員のパフォーマンスが大きくダウンしてしまうという特徴もみられる。従って、企業経営上は「法律だから守る」というだけでなく、「従業員に力を発揮してもらうために法律を守る」という視点も忘れてはならない。
これを機会に、自社の現状を再確認してはいかがだろうか。