【ブラック企業】社名初公表の影響度を株価で検証
【ブラック企業】社名初公表の影響度を株価で検証
5月19日、厚生労働省はブラック企業名を初公表した
厚生労働省千葉労働局は、違法な長時間労働を複数の事業場で行っていたとして是正勧告を行っている旨を公表。
厚生労働省が行政指導の段階で企業名を公表するのは初めて。
棚卸し業務代行サービスなどを行う千葉市の会社”エイジスである。
発表によると、4つの事業場にいる63人に1カ月当たり100時間を超える時間外・休日労働が認められ、最長の時間外・休日労働時間は約197時間だった。
(厚生労働省千葉労働局の発表より)
従来であれば、この段階で社名が公表されなかった。「書類送検」が社名公表の条件になっていたからなのだ。しかし、新基準では、複数の都道府県に事業所を持つ大企業に限って、要件を緩和した。月100時間以上の残業をしている社員が、複数の事業所にまたがって一定数いるなどすれば、行政指導でも社名が公表されることになった。1年間で1件しか該当企業がなかったことについて、『ブラック企業』が少ないとは考えていないと言っている。
驚くのは、公表された企業「エイジス」の株価推移なのだ。
5月19日、同社において違法な長時間労働が行われていたとして実名を公表され、これが売り材料視され3日続落した。最安値は5月20日の3735円だった。
発表前日の5月19日の終値は4435円。
行政による社会的な制裁措置として700円下落した格好だ。
チャート出典:ストックウエザー株式会社
実は、エイジスは、5月10日に決算を発表している。16年3月期の連結経常利益は前の期比52.3%増の26.8億円に拡大し、17年3月期も前期比16.1%増の31.1億円に伸びを見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。6期連続増収、4期連続増益、同時に、前期の年間配当を45円→50円(前の期は45円)に増額し、今期も前期比30円増の80円に大幅増配するという決発表内容だった。
5月10日の終値は3500円だった。
決算発表後、株価も好調推移し5月13日には、5190円になっている。
チャート出典:ストックウエザー株式会社
驚くことに、「ブラック企業」の認定をうけたあと3日間続落したが、現在の株価は、決算発表後の5月13日に付けた高値よりもはるかに高く、6月13日の終値は5230円なのだ。チャート出典:ストックウエザー株式会社
エイジスは、社長をトップとするプロジェクトチームを発足し外部専門家による助言を受けながら労働時間管理の徹底、業務量平準化への取り組み、業務効率化の推進などに重点を置いた取り組みを開始したことを同日(19日)発表している。この発表を評価した結果とは考えられない。
株価の推移からみる限り、厚生省による「ブラック企業」認定は、ほとんど影響を与えていないといってよいかもしれない。
どんなに決算内容がよくても、これは違法な長時間労働の結果であると判断され決算後の上昇が全くなかったことになるだろう。株価ももっと安く評価されていただろう。
厚生労働省の発表のタイミングが意図的なものなのか、たまたまだったのかは定かではないが、寛容な措置の「社会的制裁」であったのではと考えても仕方がないと思う。
今回、公表の対象外となった中小企業は安心して労基法違反を行えるということにもなりかねず、長時間労働撲滅という目的からは疑問であると考えてしまう。