兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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英明コラム マーケットストラテジーメモ
10月第1週
【推移】
29日(月):
9月中間期末の権利配当落ち分は約93円。週末の日経平均株価は144円安だったから実質は50円安程度の動き。木曜のNYダウの264ドル安からすれば軽微な下落だった。塩崎厚労相の「GPIF改革を遅らせるつもりはない」も好感されたとの解釈も聞かれる。週末の東証1部の売買代金は2兆314億円と6日連続で2兆円越え。金曜は下落だったとはいえ、中期上昇基調で売買高増加。つい8月までは株価下落で売買高増加だったから大きな変化だろう。夏までは下値での買いを待ち受けている向きが多かったから下落時の売買エネルギー増加。直近は多少上を買う向きが増えてきたので上昇時も売買エネルギー増加。裁定買い残は9月メジャーSQで減ることなく、3兆6325億円まで増加。かつての限界値6兆円まではまだ約2.5兆円の余裕がある。注意すべきはNY株の振幅の拡大だろうか。経験則から行くと、高値圏でのボラの高まりはその後の下落の予兆であったことが多い。200ドル下げてヒヤッとしても翌日は200ドル程度戻して一安心。しかし、下落幅を上回るほどの上昇幅でなく、結局はダラダラ展開の後の急落。20年以上も弱気相場に付き合ってくると、そんな歴史が脳裏にこびりついている。日経平均株価は80円高の16310円と反発。日特建、日写が上昇、九電工、クボテックが下落。

30日(火):
「消費税を上げなければ株は上がらない」と多くの市場関係者が言っていたのが昨年夏。しかし、実際に増税してみて景気指標も悪化し半年も株価が低迷したら、今度は「消費増税はいかがなものか」。あるいは07年以降市場で支配的だった「円安株高論」。
最近では「過度の円安は市場形成に弊害をもたらす可能性」。知らないうちに巧妙な格好で市場の支配的議論が正反対の立場に移行することはよくあること。日経の商品欄では「LNG、洋上備蓄拡大。値上がり予測・用船料低迷」の見出し。期近が期先よりも安いので今買っておいて備蓄して「LNG価格の反発をにらむ」というもの。足元3年ぶりの安値水準まで落ち込んだLNG価格の期先価格が高いのも解せない話だが、それはそれで商いの種になるのだろう。「世界のLNG取引量は今後も拡大が見込まれる」とされているが、実際はどうなのかというのは未知の世界。そもそも実需の世界が潤っていないから用船料が低迷しているのに「冬の需要拡大に期待」なんて甘い観測が通じるのかどうかは結構疑問なところ。商品相場の低迷は世界景気の減速を読んでいるのだろうか。あるいは地政学的リスクの低下の裏返しなのだろうか。時間の経過とともに結論は出てくるのだろうが興味深い。日経平均株価は137円安の16173円と反落。香港のデモを嫌気したとの解釈も聞かれる。セイコー、きちり、東洋水産が上昇、住商、大和、ソフトバンクが下落。

1日(水):
日経1面では「東京、外資誘致で再生」の見出し。国家戦略特区事業の素案が示されている。金融・ビジネスの拠点としての東京再生というテーマは古くて新しい。それはそれでいいのだろう。ただ考えてみると、江戸時代の鎖国の300年。この国は何はともあれ自立した独立国家として継続してきた。多少のほつれが登場した幕末に開国。確かに明治の文明開化で遅れていたグローバルスタンダートに物質的・経済的には追いついた。言ってみれば農業経済から工業経済への移行で先進国に追いついたということだろうか。しかしソレも束の間。約70年も経過して見れば、戦争と言う惨禍を経て結局はパックスアメエリカーナの世界へ移行。1945年からの日本は約70年をかけて植民地的な存在になったと言っても過言ではないだろう。遠大な計画だったとも言える。そして、バブルで踊ったあと金融ビッグバンでの金融敗戦。開国すればするほど術中に嵌り篭絡されてきたという印象は拭えない。先物の導入にしても、世界標準としてしまえばそれだけの話。しかし必要性・必然性があったのかは疑問の余地の残るところ。扉を開けば開くほど弱者になってきた構図。日経平均にしたって20年という時間軸で高値から6分の1になった。この現実を考えれば金融鎖国だってあながち荒唐無稽ではない。日経マーケット面の見出し。「日経平均4〜9月、9.1%高」。株価上昇で3月期決算上場企業の株式含み益は3月末比19%増加し約16.6兆円に増加。3メガバンクと大手生保4社の株式含み益は11兆円を越え、07年以来の水準。メガバンクの含み益は1,2兆円増加して約5兆円。日生3.4兆円、明治安田1.8兆円とされている。「株高はすべてを解決する」という言い古された格言が甦る状況。興味深かったのは「輸出株が上昇を牽引した」という解釈。TOPIX100の7〜9月の騰落率上位は村田・富士重・日東電工・ユニチャーム、アステラス・クボタ・大塚・日電産など。しかしOLCは19.5%の上昇で9位。少しチグハグさのある解釈に読めたのは気のせいだろうか。チグハグさは経済指標にも出ている。8月の鉱工業生産指数は前月比マイナス1.5%での着地。予測平均値はプラス0.3%だった。
「天候不順も出荷下押し」は「雪のせいで落ち込んだ米経済」みたいなもの。そして「車・電機在庫調整急ぐ」ともある。つい先日は「自動車・電機が牽引」という見出しもあったから豹変みたいなもの。一方で商業販売統計の8月の小売業販売額は前年同月比1.2%の増加。7月の0.6%増を越えた。スーパー販売額は前月比2.1%増で着地。消費増税の影響が消えたのかどうか。鉱工業生産指数だけでは推し量れない。日銀短観は製造業DIがプラス13で着地。市場予想を上回った。12月はプラス14(予想はプラス18)。一方で非製造業DIは予想よりも悪化。やはり消費増税影響アリの感は拭えない。日経平均株価は91円安の16802円と続落。東証1部の売買代金は2兆1418億円。北越工、乃村工藝が上昇、イビデン、サニックスが下落。

2日(木):
米10年債利回りは2.3%台まで低下。ピムコのビル・グロス氏が退任して同社の債券ファンド「トータルリターンファンド」からの資金流出は9月に235億ドル(約250兆円)。同社の「ピムコインカムファンド」に約65億ドルが流入したといっても差は170億ドル。一個人の影響力としては大きい。一方でISM製造業景気指数は56.6。前月の59.0から低下し、6月以来の低水準。予想の58.5も下回った。「世界経済の需要軟化やドル高による打撃を懸念」という解釈も聞かれる。雇用が58.1から54.6に低下。市場予想の57.5を下回った。新規受注は66.7から60.0に低下。価格は58.0から59.5に上昇。予想の57.0を上回った。いずれにしても「魔の月」の10月。ガツンと後ろから殴られたようなスタート。「売場」の提供ではなく「飼葉」の提供と見たいところ。日経平均株価は420円安の15661円と3日続落。NY株安と為替の円高傾向を嫌気した格好で売り物優勢の展開。東証1部の売買代金は2兆5939億円と9月19日以来の多さとなった。アイロム、きちりが上昇、アミューズ、エンシュウが下落。

3日(金):
興味深かったのは、日経先物やTOPIX先物の上期の売買手口。トップは圧倒的にアムロでシェアはウリカイともに20%台。以下メリルやGS、ニューエッジ等外資系が並び合計すればシェアはウリカイともに60%台。先物の6割の売買を5社程度の業者が行っているのが現実。もっとも昔は国内大手4社が株式売買のシェアを占めていたから不思議でもない。ただ、当時はウリカイの傾きは多少あった。だが先物は見事に傾きがない。要は、商いはするものの、いつもツーペイチャラの世界それを、ああだこうだと講釈するから、見えない影に怯えることになる。所詮、旅人の気紛れ程度に考えるべきなのかも知れない。9月月足陽線基準は15476円(9月1日終値)。10月陽線基準は16082円(10月1日終値)。9月メジャーSQ値は15915.98円。日経平均株価は46円高の15708円と4日ぶりの反発。CVSベイ、エアーテックが上昇、シップ、角川が下落。

(2) 欧米動向
日曜日経の「地球回覧」。
見出しは「中国シェール夢さめて」となっている。
2012年に中国当局が示したシェールガスの生産量は600〜1000億立方米。
しかし8月に中国国家エネルギー局長は300億立方米。
半分以下に目標は引き下げられた。
背景はコストの壁、
中国のシェールガスの埋蔵地は山岳知的な地域に集中
採掘コストはアメリカの3〜4倍だという。
そしてシェールガス採掘に使用される大量の水も問題だとされる。
水もエネルギーも不足している中国にとっては、水は貴重な資源でもある。
エネルギーよりも水優先という立場もあるのだろう。
ただこれは中国だけの問題なのだろうか。
アメリカだってこうなる可能性はなくはない筈。
一方でロシアは東シベリアのガス田からの輸出先を中国に限定した。
西シベリアからの輸出もそうなる可能性は大きいという。
逆に言えば・・・。
ロシアからガスを買わざるを得ない中国にとってシェールガスの自国生産は今必要ナシ。
ロシアからの独占的供給を受けざるを得ない中国。
この構図は結構重要な気がするし、主要国の思惑が見え隠れしている。

IMFは「世界経済見通し」の一部を公表。
世界の貿易、投資フローの不均衡が8年前のピークから3分の1以上縮小したと指摘した。
経常赤字国の需要が減退したことが不均衡縮小の主因。
失業率が上昇し、低成長に陥っているとしている。
先進国の需要弱含みは継続し、経常赤字は縮小傾向が続くと予想。
一方でトルコやブラジル、ニュージーランドなど一部の国は、今後5年に経常赤字が拡大。
資金フローが逆流した際に大きな打撃を受ける恐れがあるとも指摘している。
コメントは「大規模な不均衡が解消したことで、世界経済へのシステミックリスクが後退した」。
日米中など経済大国への不均衡集中も改善傾向。
「急な(フロー)反転のリスクも後退した公算が大きい」と指摘した。
米国については、今後5年に脆弱性が増大する唯一の主要債務国だと指摘。
世界全体のGDPに対する純対外債務の比率は、
2006年の4%から8.5%に上昇すると予想している。ただ、投資家が米資産への信頼を失う公算は小さいとも分析。
ドルが準備通貨としての地位を失う可能性は8年前と比べて低いとしている。
多分結論は「アメリカの債務は増えるが、ドル基軸通貨体制は変わらない」。
穿ってみれば「ドル高」支援のコメントに聞こえるのも気のせいだろうか。

雇用統計通過。
非農業部門の雇用者数は前月比24.8万人増で着地。
7月の改定値は14.3万人、8月は18万人に上方修正された。
民間サービス部門の雇用者数は20.7万人増加。
食品・飲料など小売りが堅調。
情報通信・金融・レジャー関連は好調だった。
既に百貨店のメーシーズが既にクリスマス商戦での8万人強の雇用を発表。
やはり雇用は悪くない。
結局、雇用が良くて金利上昇懸念という間違ったシナリオからは脱却できそう気配。
あのチグハグが大手を振っていたことが異常だったのだろう。
東証では空売り比率が36.4%(前日は36%)と拡大。
日時のデータが残る08年秋以降では最高となった。
売買代金の4割が空売りというのが正しいのかどうかはわからない。
しかし、確信犯的な売り方シナリオに疑心暗鬼が乗っかる構図は変わらない。

(3)アジア・新興国動向
香港のデモの問題が燻る。これは香港・中国だけでなく、先日もスコットランド問題で経験したところ。世界的な流れなのだろう。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
6日(月)日銀金融政策決定会合、ノーベル生理学医学賞発表
7日(火)H2Aロケット打ち上げ予定、家電見本市CETEC JAPAN 日銀総裁会見、ノーベル物理学賞発表
8日(水)国際収支、景気ウォッチャー調査、米FOMC議事録、ノーベル化学賞発表、BOE金融政策委員会
9日(木)都心オフィス空室率、機械受注、すかいらーく(3197)上場、米卸売り在庫、G20財務相・中央銀行総裁会議、韓国休場
10日(金)オプションSQ、米財政収支、輸入物価、IMF世銀全体総会(ワシントン)

10月相場。
過去24年間は11勝13敗で12ヶ月中7位のパフォーマンス。
2日(木)ポイントの日、ECB理事会
6日(月)水星逆行開始
8日(水)皆既月食、ポイントの日
10日(金)SQ
14日(火)ポイントの日
15日(水)ECB理事会
19日(日)サンディグ・スプリング彗星が火星に接近
20日(月)ポイントの日、ブラックマンデーメモリアル(1987年)
24日(金)部分日食、新月、ブラックサースデーメモリアル(1929年)
26日(日)水星順行開始、欧州サマータイム終了

10月アノマリーは「NY市場の10月効果」。
10月に安値を付けやすいので、10月に買うと儲かりやすいというもの。
セル・イン・メイの反対みたいなものだが今年はなさそうだ。
あるいは「Tax Loss Sales」。
投信の10月決算を控えての節税目的の売りもあると言われる。
一方、10月4日(投資の日)が上げの特異日。
だが今年は土曜日。
16日も上げの特異日。
こちらは木曜なので期待したいし、今年は水曜のNY高、木曜の東京株高になっている。

「10月終値は翌年の安値」のアノマリー。
昨年は14327円。今年の安値は13885円。
因みに昨年10月安値は13748円だったからほぼその水準。
今年の隔月のアノマリーでは「3月に下落したら8月は上昇」が該当した。
次は「9月に上昇したら10月も上昇する」。
そして「10月に上昇したら翌年2月も上昇する」なのだが・・・。
「魔の月」10月がやってくる。
因みに9月月足陽線基準は15476円。
これは遥かに上回っている。