兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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英明コラム マーケットストラテジーメモ
10月第3週
【推移】
14日(火):
朝の台風通過でアタフタした兜町。25日移動平均(15874円)からの乖離はマイナス5.91%。騰落レシオは75.51%まで下落。8月8日が78%、4月14日が74.14%だったのが今年の記録。松井証券経由の信用評価損益率(速報)は前週末に売り方買い方の形勢が逆転。週末日段階で売り方マイナス7.55%、買い方マイナス14.44%となった。今年の買い方のバッケンレコードは2月4日のマイナス16.18%。ほぼその水準まで来てしまった格好。日経平均株価は364円安の14936円と5日続落。エアーテック、コスモス薬品が上昇、サニックス、九電工が下落。

15日(水):
日経朝刊マーケット総合面の場況。「欧州を中心に世界景気の減速を警戒する雰囲気が強かった」。これは許せるコメントの部類。しかし「1ドル=106円台まで上昇したこともあり、目先の利益を確定する売りが広がった」。1ドル=106円台まで上昇したのは前場寄り前の動き。確かに寄りは続落からのスタートだった。しかしCMEの終値14835円までは売られなかったし日経平均の前引けは15000円台。後場になって一本調子で下落幅を拡大した。そして「利益確定の売り」の表現。3日で1000円近く下落しており、しかも8月8日以来の15000円割れ。どこに利益確定の要素があるのだろうか。もしもこの水準で利食えるのならば、指数的には8月8日のピンポイントの買いだけ。 それ以前は4〜5月の買い、あるいは昨年秋に買った玉ということになる。それを「目先の利益確定」というのかどうなのか。「利益確定の売り」という言葉を重宝するなら「損失確定の売り」だって使うべきだろう。
あるいは「損失確定の買戻し」や「利益確定の買戻し」だってある筈。「マネーリザーブファンド(MRF)」の残高は10兆円を越えた。「株や投信の利益を確定して得た資金が流入、次の投資機会を伺う待機資金」。9月の残高は3951億円増加し10兆84億円と膨らんだ。面白いのはアベノミクススタート直前に月間1.5兆円の流入。そしてスタート直後に月間1兆円の流出。方向性が出れば、10兆円近いマネーが蠢く方程式は変わっていないのだろう。9月の流入は確かに利益確定だったかも知れない。しかし10月の値動きを踏まえれば「目先利益確定」はないだろう。わかったようでわからないのが「安全資産としての日本国債」と言う表現。前日の10年国債利回りは0.495%まで低下した(価格は上昇)。日本国債や米国債が安全資産と言う表現は良く使われる。株安のときの安全資産としての債券という側面は確かにあろう。しかし世界最大の対GDP比率の借金をしている国の国債は本当に安全資産なのかどうかの吟味は必要。約500兆円のGDPの国の借金は1000兆円。国民金融資産があるし、日銀も買ってくれているし、何より海外投資家の保有比率は低い。そういう理由をつけては来るのだろう。もし本当に安全資産なら、債務を縮小して基礎的収支のバランスをとるための増税など必要があるのだろうか。安全資産の国債を発行すれば済む話だろう。それでも消費税の増税を画策すると言うのはつじつまが合わない。日経平均株価は137円高の15073円と6日ぶりの反発。アベノミクススタート以来日経平均の続落は5日まで(TOPIは7日まで)。単に6日続落を避けたという印象は拭えない。そして東証1部の売買代金は2兆1030億円と6日連続で2兆円越え。NYにしても3市場の売買高は100億株を超えており、下落=出来高増は日米一緒。日本化、エアーテックが上昇、持田薬、エクセルが下落。

16日(木):
NY株の下げの材料視されたのは9月の小売売上高が前月比で0.3%減少したこと。マイナスとなるのは1月以来で、市場予想の0.1%減より大幅な落ち込みとなった。 8月の企業在庫は前月比0.2%増と、昨年6月以来の低い伸びだった。9月の卸売物価指数(PPI)も前月比0.1%低下で着地し昨年8月以来約1年ぶりの低下。市場予想はプラスの0.1%だった。普段なら通過するだけの経済指標に異常なまでの執心というのが奇妙な印象。しかし本筋ではなかろう。ゴールドマン・サックスは2014年後半のGDP予想を下方修正。理由は「これら経済指標が弱かった」とされる。7〜9月期の成長率は年率3.2%で当初の3.5%から引き下げ。10〜12月期の成長率も同3.0%で当初から0.25%ポイント引き下げ。「欧州などの景気減速をめぐる懸念がついに米国にもやってきた」。そう言われれば何となく納得してしまうのだろうか。ただ、そうするとダウ輸送株指数の続伸逆行高の説明がつかない。そして米財務省が15日発表した2014会計年度(14年9月までの1年間)の財政赤字。4830億ドルと、前年度の6800億ドルから3分の1近く縮小。2008年度以来6年ぶりの低水準。この解釈は「景気回復に伴い税収が増加し、歳出は小幅な伸びにとどまった」。
財政赤字は4年連続で1兆ドルを超えていたのだからこれは天晴れ。米国債利回りが一時2%を割れ込んだのもこれが理由だとすれば何となく納得。決して「安全資産への逃避」ではなかったことになる。もう一つチグハグなのは「工作機械受注、日米が好調」の記事。9月の工作機械受注は1355億4800万円、リーマンショック後で最高の水準。製造業の国内回帰が鮮明な米国や中小企業の設備更新投資の多い日本で増加。特に米国は2000年以降で最高という。なのに、米国経済不安論の台頭。金融緩和はともかく利上げの先延ばしを図りたい向きの抵抗が今のNY市場と考えた方が良いかも知れない。債券下落ポジションのまき戻しでの金利低下の裏返しの株安とすればその巻き戻しも間違いなく起こる筈。東証1部の売買代金は2兆7647億円。SQ算出日を除けば2月5日(3兆3064億円)以来の水準。下落時の売買エネルギー拡大だけは墨守された格好。とはいえ8月8日の14753円は下回った。わずか7日で1152円の下落。たった1週間前の金曜にきまった10月SQ値は15296円だったがはるか上。9月25日高値16374円からはわずか15営業日しか経過してない。それでも下向いた25日線(15811円)からのカイ離はマイナス6.79%。下向いた75日線は15536円。下向いた200日線は15113円で2.48%のマイナスカイ離。騰落レシオは72.2%。2月5日は14000円攻防戦、8月8日は15000円攻防戦。今回の16000円攻防戦は15000円割れまであっけなく破られた。10月陽線基準16082円など話題にもならない。日経平均株価は335円安の14738円と反落。為替の1ドル105円台までの上昇を嫌気したとの解釈。帝国繊維、シキボウが上昇、Jディスプレイ、図書印刷が下落。

17日(金):
日経国際面での「ファンド勢に誤算」の記事。「米金融市場が大荒れとなった背景にはヘッジファンドなど投機筋の誤算がある。米景気の順調な回復を見込み、ドル高や米長期金利の上昇に賭けた先物取引などが裏目に出た。『米国頼み』の運用をしていた投資家はハシゴを外された形になり、米国債を売り持ちにしていたファンドは損失覚悟の買い戻しを迫られた。これが米長期金利の低下と株安に拍車をかけた」。「債券売り、株買い、円売り」のスタンスの巻き戻しならばいつかは種も尽きる。というか、年末を控えての「今年の負け」を確定した連中が目ざす次のターゲットは何だろう。売って損してドテン買い戻したならまた売りの姿勢を取るのかどうか。むしろ心理としては逆に買いで儲けようとする可能性は高い。だったら、世界経済の不安を惹起して仕込みを安くしたい筈。だったらしばらくは悪材料満載ながら株価が下がらないというシナリオもアリかも知れない。「米株相場が調整局面入りしたとすれば下げ余地はまだ大きい(米ヘッジファンド)」 との指摘などまさにそのノンポジショントークに聞こえるのは気のせいだろうか。ヘッジファンドが本当のことを言う可能性は低いだろう。ならば逆に解釈した方が良いかも知れない。フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁のコメント。「株価が急落するなど金融市場が不安定な展開は米経済が大きく打撃を受ける。FRBが対応策を講じる程度には達していない。ただ消費需要には足かせになる可能性がある」。市場の一部が求めるような金融緩和などあり得ないという姿勢は明確。面白いのは「FRBは雇用、インフレの目標への影響を見極める必要がある。現時点で大幅な売りの原因は定かではない」。市場のプロでないFRBが株売りの原因を突き止められるとは思えない。一方でセントルイス連銀のブラード総裁。「インフレ期待の低下踏まえるとFRBが量的緩和の縮小停止する可能性もある」。どちらの綱引きが勝つかが課題。日経平均株価は205円安の14532円と続落。約5ヶ月ぶりの水準まで下落した。コンベア、リクルートが上昇、トヨタ、日立などが下落。

(2) 欧米動向
まことしやかに囁かれてきたQE終焉→NY株下落のシナリオ。
過去を振り替えてみれば確かに一時的には金融緩和の終了はNY株安となってきた。
QE1(08年11月〜10年6月)の終了前後のS&P500指数。
10年4月26日の高値1212.15ポイント→6月30日1030.7ポイント。

6月30日がQE1の終了日だったがその直前1ヶ月で約15%の下落。
QE2(10年11月〜11年6月)の終了前後のS&P500指数。
11年5月2日1370.58ポイント→6月16日1258.07ポイント。
約1ヶ月で10%の下落となった。
短期債買い・長期債売りのオペレーションツイスト(11年9月〜12年6月)。
終了前後のS&P500指数。
5月1日1405.82→6月1日1278.04。
こちらも約1ヶ月で9%の下落。
市場心理は「誰かが売るのであれば先に売っておきたい」。
見えない狼に怯える少年の心理と同様だろう。
因みに過去のQE終焉の下落の際のS&P500は1200〜1,400ポイントレベル。
今年1900ポイントを奪還したのは記憶に新しいところ。
下げてもまた日は昇ってきたのも歴史だが・・・。
このDNAはなかなか登場しないもの。

結局・・・。
売り回転の相場はババ抜きゲームみたいなもの。
最後のジョーカーを手持ちにしたくなくて、我先に他人に渡すところが一緒。
しかし思うように他人には渡らないというのも一緒。
そして買い回転の相場はポーカーゲームのようなもの。
自分の手の内を最大限脚色して、凄い手であるように思わせる駆け引き心理戦。
上昇相場が永遠に続くような錯覚を惹起し、他人が下りないような展開を目論む。
経済指標や地政学的リスクなど考えずに無心の境地のトランプになることの方が大切かも・・・。

(3)アジア・新興国動向
世界株の昨年末比騰落率で1位はアルゼンチンの95.6%。
2位インド23.4%、3位フィリピン18.9%、4位タイ・インドネシア17.7%、6位ベトナム16%。
一方最下位はロシアの▲25.6%、次がギリシャ▲19.2%、そして日本▲10.8%、以下
英国▲6.5%、フランス▲6.1%、韓国▲5.5%。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

20日(月) 全国百貨店売上高、BBレシオ 
21日(火)米中古住宅販売、中国7〜9月GDP及び経済指標
22日(水)貿易統計、訪日外国人客数、米消費者物価
23日(木)大証FX取引最終日、米CB景気先行指数、EU首脳会議(ブリュッセル)
      中国HSBC製造業PMI
24日(金)気象庁3ヶ月予報、米新築住宅販売、英国・韓国7〜9月GDP

脳裏に浮かぶのは08年秋の動き。
大きなボラの下げが続き少し戻したかと思えばまた下落。
9月16日に始まった下落は結局10月28日(火)の前場で下げ止まった。
急落に怯え、一安心したあとのまた急落。
株価は下げ続けることはないし上げ続けることもないからこのリズムになるのだろうか。

さすがに08年には「売り疲れ」と言う言葉が聞かれたことが甦る。
あのリクルート上場記念日にNYからは下落の歓迎のようなモード。
せっかくの10月16日上げの特異日の上場だったのに・・・。
NYの倍下げてNYの半分上がる東京株式市場。
律儀なものである。

簡保や年金関連の株買いが言われ始めたのが今年5月。
そこから9月まで株価は堅調な動きとなった。
ところでその間の株価の月中平均を見てみると・・・・。
まずはTOPIX。
5月1175.15、6月1246.90、7月1276.36、
8月1271.71、9月1310.07と1300ポイント台だった。
そして日経平均。
5月14343.14円、6月15131.80円、7月15379.29円、
8月115358.70円、9月15958、47円とほぼ16000円。
簡保やKKRやGPIFが動いていたとすると、含み損は大きい。
一方で、日経平均が高値をつけた9月25日から10月14日までの騰落業種。
下落上位は鉱業、卸売、証券、鉄鋼、金融。
下落下位は水産、小売、食料、医薬品、繊維。
比較的資源や海外展開のセクターが売られ、内需系のセクターの下落が少なかった。
ということは・・・。
消費税などの問題ではなく海外の影響での下落だったということかも知れない。

興味深かったのは、あるストラテジスト氏のコメント。
(1)欧州景気は確かに低迷してはいる。
しかし「低迷」であって、悪化というほどの事態ではない。
ユーロ圏の実質GDPの前期比をみると、直近の4〜6月はゼロに落ち込んだ。
しかしその前の1〜3月までは、4四半期連続プラスだ。
実質個人消費に限ると、直近まで5四半期連続プラス成長。
鉱工業生産前年比は、直近の7月分まで、11か月連続プラス。
消費者物価前年比上昇率は、1%にも満たない状況が続いている。
ディスインフレではあるが、マイナスではない。
つまりデフレとは言えない。
(2)米国株のおひざ元である米国経済は、引き続き堅調。
雇用統計における非農業部門雇用者数前月比は、今年は1月と8月以外は20万人以上増加。
新規失業保険申請者件数も減少基調にある。
10月4日までの4週移動平均値は06年2月以来の低水準。
QE3の終了懸念もあるが「今さら?」の感。
(3)ヘッジファンドも一時円売りを進めたと言われる。
ただし、一部の米国ヘッジファンドは「今は騒がれるほど円売りは持っていない。
そして既に手じまった」と言う。
個人が買い上がっている間、ヘッジファンドはこっそり手じまい。
「振り返れば個人しかいなかった?」。

たぶんこの「今は手仕舞った」に真実があるのであろう。
人が騒ぐ時には事が終わっているのと考えた方が良い。
人が騒ぐのは余韻の時。
「何を騒いでいるのだろう」というのがヘッジファンドたちと考えてもよいのではなかろうか。