兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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2015年11月1週
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11月1週
【推移】

2日(月):
週末30日の日経平均株価は8月28日以来2カ月ぶりに終値で19000円台を回復。週間では257円上昇し週足陽線。そして7月以来の月足陽線。「10月が高ければ翌年2月も上昇」のアノマリーは前提が整った。13週移動平均18783円を抜けたので次は26週移動平均19537円が視野に入ってきた。その前には75日移動平均の19093円や200日移動平均19210円。加えて一目均衡の雲の上限が19181円だから結構重なっている。とはいえ、先月の18300円水準同様に抜ければその先は早いと読みたいところ。それにしても10月の日経平均株価は1694円(9.7%)の上昇。上昇幅は95年7月の2160円以来のこと。
書いてしまえば簡単だが、過去20年間なかったことが起きたということ。因みに10月のNYダウは8.5%の上昇。月間上昇率としては2011年10月以来4年ぶりだった。多くの予測を覆して、天使が舞い降りてほほ笑んだ10月、幸せチックはハロウィンとともの終焉した。「10月は安いだろう」という多くの市場関係者の思い込みは間違いだった。しかも「日銀の追加金融緩和がなければ株安」というのも誤解だった。そのうち「アメリカが金利を上げると株価は下がる」という錯覚も是正されるのだろう。専門家はしばしば理路整然と間違うのがこの世界でもある。たぶんこれは多分に理路整然とマーケット番組を作ろうとするマスコミの姿勢も悪いのだろうと思う。
時々刻々動いている市場を相手にしているのにシナリオの格好を付けようとするから間違えやすい。そしてその展開に権威的なものを感じる市場も情けない。市場は他人の言動を疑い自分の相場観を信じることで見えやすくなる筈。そして、長年の下落相場で育ってきた多数の市場関係者は相場の力を信じていないというのも現実なのだろう。土曜の日経1面では「上場企業の6割増益」の見出し。主要企業511社の9月中間期決算を通過した。社数で全体の33%、時価総額で46%の企業の成績は16%の経常増益。
依然として2ケタ増益の見通しは続いている。通期も増益で最高益更新の見通しというのが現実。それでも「中国景気の減速」を懸念する声も聞こえる。ネガは賢く聞こえポジは愚かしく聞こえるのも市場の常。それでも「円安・北米の好調・インバウンド消費」は変わらない。愚かしいのではなくこれに基づいて推論しないと大きく間違うことになろうか。日経平均株価は399円安の18683円と4日ぶりの反落。村田、日東電工が上昇。神戸鋼、日東工業が下落。

4日(水):
相場にはリズムとスケジュールがある。例えば月曜の日経平均は399円安の18683円と大幅に下落した。場況は「利益確定売り広がる」。確かにそう言ってしまえばそうでもある。10月21日→23日のマド空け水準18605円→18746円を埋めに行く動きでもあった。しかし万が一利益確定売りであるならばそれ以上に下を売り叩くことはなかろうとも読める。PERは15.04倍まで低下した。
週末に75日線19093円を抜けなかったからという声も聞かれる。もっともらしい解釈は「週明けで祝日控えで週末のNY株安」。「中国景気警戒感と日銀の追加金融緩和見送りが悪材料」とも言われた。しかし追加は先延ばし、中国は所詮景気の悪化はわかっていること」とすれば特に悪材料でもなかろう。
なにより11月4日は上げの特異日。それを控えてジャンプ台を低くしたと考えた方がしっくりする。あるいはスケジュール的には11月4日は郵政上場記念日。何が何でも明るい市場展開を望めば、月曜は安くなければいけなかった。そして水曜は高くなければいけなかった。ここ半月ほど継続しているが続落はないというリズム。だったら月曜のあの無味乾燥な下落にも意味があったということになろうか。日本郵政グループ3社の合計株主数は170万人を超えるという。因みにみずほが90万人だから極端に郵政は多い。株主が個人に特化した銘柄としての成長というのはアリかも知れない。
「郵政祭」通過。郵政(6178)が公開1400円。初値1631円(9時33分)・終値1760円(公開価格比25.7%上昇)。かんぽ(7181)が公開価格2200円。初値2929円(10時6分)・終値3430円(公開価格比55.9%上昇)。ゆうちょ銀(7182)が公開価格1450円。初値1680円(9時33分)・終値1671円(公開価格比15.2%上昇)。驚異的だったのは朝の寄り付き前8時30分頃のかんぽ株の気配値が8800円だったこと。いくら何でも公開価格比4倍はないだろうとは思ったものの人気は窺われた。
結果は初値に対してストップ高。売買高は4146万株、売買代金は1308億円と膨らんだ。因みに売買代金トップは日本郵政の2780億円、2位がゆうちょ銀の2114億円。3位が日経レバ(1570)の1889億円で断然トップの座を郵政に譲り渡した格好。4位がトヨタで614億円、5位が三菱UFJで487億円。郵政が日経レバを抜いたことで森から木の時代という印象もあるが、それでも日経レバがトヨタの3倍。まだまだ架空指数の売買が主役ということなのだろう。
日経平均株価は243円高の18926円と反発。トヨタ、セブンアイが上昇。鹿島、三井不が下落。

5日(木):
株式市場が単細胞チックな存在であることは言うまでもないが、郵政が登場すれば郵政一色。しかし粛々と決算発表は続いている。対象企業の40.5%が通過した4〜9月決算。売上高は上期3.6%増、通期1.7%増の見通し。経常利益は上期11.7%増、通期9.9%増の見通し。純利益は上期15.4%増、通期18.3%増の見通し。通期見通しの2ケタ増は変わりない。日経平均株価のPERは15.15倍。採用銘柄のEPSは1249円。ジワジワと戻してきている。
アメリカではイエレンFRB議長が「利上げ12月の可能性」との発言。「経済データ次第だが」という但し書きがあるものの利上げの可能性を市場は60%まで見始めた。というか、年内利上げという発言に沿ったものだし次のFOMCは12月。当然のコメントなのだろうが市場はいかにも驚いたような反応をするから面白いもの。もういい加減にしかめつらの不毛の利上げ議論はやめた方が良さそう。
郵政祭りに隠れてはいるが、REITについては日本生命が3000億円の運用を目指す方向と報じられた。REIT市場に参入し運用1年で1000億円規模、3年で3000億円規模を目指すという。日銀が買っているREITの額は年900億円。同等の買い手が登場することになる。そして他の生命保険会社あるいはかんぽでもこのような動きが出てくるとしたら結構面白い。
日銀が今年買ったETFは2兆5577億円。REITは802億円。13年以降累計でETFが6兆4059億円、REITが2584億円。これも実は結構な数字ではある。
日経平均株価は189円高の19116円と続伸。売買代金は3兆411億円。郵政3社、JTが上昇。三菱商事、タカタが下落。

6日(金):
日経の見出しは「郵政活況、2日目も上昇」。小見出しは「投資初心者誘う」。SBI証券のコメントは「売り出し株の抽選に漏れた投資初心者の買いが続いている」。確かに募集工程においては各社とも新規顧客が増加したことは否めない。しかし公開価格を大幅に上回った株を投資初心者が上値追いで買うというのは従来の概念では無理筋。たとえばかんぽ株でいえば公開価格の倍近い値段で初心者が買い注文を出すものだろうか。「投資初心者誘う」というのは証券業界や証券マスコミの欲しい構図であることは確か。
そもそも投資マインドがそこまで温まっているという訳ではないような気がする。逆にシックリ来たのが松井証券の動向。「新規資金の流入を呼び水に個人の短期マネーが動いている面もある。松井証券では郵政3社の売買のうち1日で売買を決済する超短期の『1日信用』の比率が6割に達した」。
これが真実に近いのではなかろうか。売り出し株の抽選に漏れた投資初心者が上値を追って買うというのがあるのだろうか。フツーは諦めるか、あるいは初値では買うのかもしれない。さらに上値を買ってくれるのは理想としては正しかろう。今まで臆病だった資金が郵政上場をきっかけに上値を追ってくれる資金に変貌したというのは美しい。しかし投資初心者の買い観測は皆の望む姿に迎合した理想ではあろうが幻想の世界。実は相場巧者の短期売買という図式が正しいような気がする。
日経平均株価は25日移動平均からプラス3.9%のかい離。4%かい離が第1限界点という法則を脱却して第2段階プラス8%〜10%かい離を望みたいところ。騰落レシオは140.32%。今年の記録は2月26日の141.42。昨年12月4日が141.97。正念場を抜けて160%くらいまで挑戦出来るかどうか。サイコロは9勝3敗で75%。松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス8.338%。買い方はマイナス9%。日経平均が上昇しても売り方の評価損が減っている。ということは売り残の決済(買い戻し)が進んでいるのだろう。
Quick調査の信用評価損率(10月30日現在)はマイナス9.81%で2週連続改善。裁定買い残は1209億円増加し2兆5391億円。(5週連続増加)。
空売り比率は32.4%。

(2) 欧米動向
NYダウは年初の水準(17832ドル)を上回っている。
大統領選前年株高のアノマリーと西暦末尾5の年のアノマリーは実現しそうなムード。
サンタクロースラリーに対する期待感が高まってきた。
一方で「10月に急騰した年の11月〜12月は冴えない展開というアノマリーもある。
1928年以降、10月にS&P500指数が5%以上上昇したケース。
翌月11月のS&P500指数の騰落率は平均でマイナス0.12%。
因みに2011年10月にS&P500指数が5%以上上昇した翌11月はマイナス0.5%だった。
因みに1945年以降10月にS&P500指数が7%以上急騰したのは5回。
その年の11〜12月の平均騰落率はプラス1.9%で平均(プラス3%)よりも小さかった。
このアノマリーはつぶれて欲しいところ。


(3)アジア・新興国動向
中国最大の貿易見本市「広州公易会」が開幕したが契約額が減少したという報道。
24000社の中国メーカーと17万人以上の海外バイヤーとの間の契約金額は約3.27兆円。
これは前年同期比7.4%減。
リーマンショック後の09年春の水準も下回りそうだという。
しかし12年の春開催以降8回連続での減少だから今に始まったことではない。
「景気の減速や人件費の高騰を受け」という解釈がある。
しかし実は「人件費上昇による生産コストの上昇」が大きい理由だろう。
コスト競争力がなければ勝てない品質のものしか作っていないからこうなる。
というか、所詮まだそういうレベルだということ。
安さを競った時代はいずれ品質で勝負する時代にならざるを得ないもの。
これは「メード・イン・ジャパン」の歴史を見れば明らかだろう。
最初は「安かろう悪かろう」の代名詞だったが、今では「高級品」のイメージとなった。
ここに中国が追いつくためには相当の時間を要すると思う。
中国の景気が悪いからではなく、中国の経済が成長し給与レベルが上がったからこうなっただけのこと。
生産国としての位置づけから消費国としての位置づけへの変化の一里塚にしか過ぎなかろう。
生産国の受け皿は東南アジアをはじめ世界にはまだまだ沢山ある。
そうではなく、消費国としての覚悟が問われる時代が来たという認識が中国にあるかどうか。
それが先進国の役割だろう。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・
9日(月)勤労統計調査
10日(火)景気ウォッチャー調査、中国消費者・生産者物価、シンガポール・マレーシア休場
11日(水)マネーストック、米財政収支、中国小売売上高、鉱工業生産、都市部固定資産投資
12日(木)機械受注、都心オフィス空室率
13日(金)オプションSQ、米小売売上高、生産者物価、ミシガン大学消費者信頼感、ユーロ圏GDP、独GDP

11月霜月。
月末のブラックフライデーから年末まではしっかりと見るか。
あるいは12月はクリスマスで動かないことが多いからその前にひと稼ぎとみるか。
アベノミクス相場スタート以来、12月高値が3回続いている。
今年は4回目に挑戦。
その前哨戦が10月の「7月以来の月足陽線」。
「10月が高ければ翌年2月も上昇」のアノマリーは前提が整った。
「株価は2.5.8」の法則で動くとすれば現状は「18000〜20000円」のレベル。
細かく見れば「18800円→19000円→19200円→19500円」。
このレンジでの推移なのだろう。

大和のレポートは「上期の株価マイナスのアノマリー」。
今年4〜6月の日経平均は10%近くの下落だった。
1975年→2014年の40年間で日経平均が上期に下落したのは18回。
そのうち下期に上昇したのは12回で上昇確率66.7%(平均騰落率4.7%)。
そして下落した18回のうち10月に上昇したのが10回。
そのうち下期上昇となったのは9回で上昇確率90%(平均騰落率15.9%)。
因みに10月が下落したのは8回。
そのうち下期上昇となったのは3回で上昇確率37.5%(平均騰落率マイナス9.3%)。
結論は上期下落→10月上昇→下期上昇の確率90%となろうか。


(兜町カタリスト 櫻井英明)

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