兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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2016年02月1週
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02月1週
【推移】

1日(月):
日銀がマイナス金利の導入を決定。市場は変化を求める場所。月末にはきっちり1月SQ値17420円を抜いた。2014年10月水準を下回れば日銀のメンツが経たないという読みは当たったことになる。このp1ヶ月で分かったことは、「やはり押してもダメなら引いてみな」の心理。換言すれば「買ってもダメなら売ってみな」の簡単な手法。
上に限界があるのなら、一度引いて飼い葉を与える常套手段が発揮されたということだろうか。

因みに日経平均は週間では559円高となり今年初の週間上昇。週足では2週連続陽線となった。ドル円は日銀のゼロ金利導入を背景に121円。円売りドル買いの格好。しかし同時に米10年国債利回りは1.922%と低下。日本の10年国債が前日比0.1215%低下し0.095%になったことへの追随かも知れない。史上初の0.1%割れである。
しかし、米国債利回りの低下がどうも不自然なのが気にかかる。この先、FRBの追加利上げがないという読みだとしたら、リスクを取らない一方での株高傾向。リスク重視とノンリスク重視のどちらかが間違っていると言わざるを得ない。如月の進展とともにどちらが正しいのかが明らかになるのだろう。少なくとも空売り比率が37%台まで低下したことだけは好感できる。

日銀のマイナス金利の導入という劇薬の副作用のレベル次第ということなのだろう。日経朝刊トップが「遺伝子治療薬国内発売へ」の見出し。2020年に400億ドル市場が見込まれる遺伝子治療薬の市場。ただ製品化に至っていない現実だが、ようやく日本のチカラが発揮されるときが来た印象。一昨年の改正薬事法による遺伝子治療の規制緩和は日本を世界のトップランナーに押し上げた。ようやくそれが現実化してきたということだろう。
日経平均株価は346円高の17856円と続伸。三井不、エプソンが上昇。ゆうちょ、トクヤマが下落。

2日(火):
10年国債利回りは昨日一時0.05%まで低下。元本を複利で2倍にするためには、1440年かかる計算となる。1000年経っても元金が倍にならない世界というのは未体験ゾーン。一方でREITの分配金利回りは平均3.5%程度。東証1部全銘柄の配当利回りは1.65%。数字から言えば、完全に預貯金や債券での運用を放棄すべき水準でもある。株価変動がないと仮定して株の配当で元金を倍にするには約43年。REITで元金を倍にするには20年。だからと言って配当や分配金魅力だけで株式市場にお金が向かうとは思えないのも事実。
この投資心理の葛藤が期待と怯えの相克となっているのが現実。異常な低金利に付随して考えたいのはかつて跳梁跋扈した「財テク」とか「円キャリートレード」の古語。どこかでぶり返す気はあるのかないのか。ここが一番興味深いところ。日経平均株価は114円安の17750円と3日ぶりの反落。エーザイ、イーレックスが上昇。トヨタ、NOKが下落。

3日(水):
英国がEUを離脱するかん知れないという環境下で欧州やユーロに目が行かない市場。昨年の今頃はギリシャばかりがクローズアップされていたがきっと飽きたのだろう。
依然として台頭しているのは米・中・原油の3本柱。原油はバレル30ドル割れで悪材料。中国は経済指標は悪化しているが上海株式は反騰基調。

所詮来週は春節なので蚊帳の外なのだろうか。今週末の米雇用統計は市場予想が19万人増で良くはない。しかも大統領選所詮のアイオワ州党員集会の結果は共和党・民主党ともに混沌。市場からは「アイオワ州での候補指名争いについて、はっきりした勝者がおらず、不透明感が残った。投資家は大統領選かエネルギー市場のいずれかでもう少し確実性が高まることを望んでいる」の声。
それこそ節分だけに「鬼は外」があからさまになってきた。続けてけて「福は内」と言いたいところだが日経平均採用銘柄のPERは15.15倍。EPSは1171円まで低下した(前日は1169円)。昨年の12月8日の1270円が懐かしいところ。株式で大切なのは連想。グーグルの親会社のアルファベットの時価総額がアップルを抜いたのなら、時代はハードでなくソフト。
当たり前のことだが、アメリカで起きたことは日本でも起きる。コンピュータやスマホの個体が話題になる時代ではなくソフトこそテーマということを時価総額が表現している。
日経平均株価は559円安の17191円と続落。レンゴー、横河が上昇。IHI、デンソーが下落。

4日(木):
日経平均のPERは14.7倍でEPSは1169円と低下。全体の40%が通過した第3四半期決算。ようやく通期純利益見通しがわずか0.2%とはいえプラスになった。「今期経常増益率は期初時点では前期比8.7%増。その後下方修正が続き3日時点で4.1%増。野村証券によると来期は21%の大幅なマイナスに進む。EPS1169円で5%減益ならPER15倍で16658円。16倍でも17768円」という試算の声もある。小賢しい計算だけで市場を語ることはできるが、計算だけで済む筈はない。

ただ「鬼は外」とばかりに悪材料を外に求めがちな風潮には警鐘となろうか。おのれを顧みずに他人の動向ばかりを気にするから自信が喪失する。風に揺れる風鈴のような脇役ではなく主役としての演出を考える時間が来たのではなかろうか。原油高、NY株高、上海株平穏。それでも黒田マイナス金利効果が為替も株でも消されるならどこかおかしい。鬼は怯え安い場所に出るし、震えていると柳もお化けに見えるもの。

前日日銀はETFを330億円買った。先月は352億円だったが22億円の減額。ETF買い入れ回数の増加を予感したとしたら、チトさびしい。「大病院の実績開示義務」というのが日経朝刊トップの見出し。受信内容を患者は比較しやすいようにとの方向と言う。興味深いのは「今の診療報酬は一つ一つの病気の治療にかかるコストに合わせて決まるのが減速。治療結果は関係しないため運営効率が悪くても報酬は同じだ」。たしかに治癒した治療には多くの報酬を、治癒しない治療には少ない報酬をという姿勢はアリだろう。成功報酬主義の医療というのはアリかも知れない。というか、既得権益だけで生きている世界は成長しにくいもの。
日経平均株価は146円安の17044円と続落。国際帝石、日本紙が上昇。日立、パナソニックが下落。

5日(金):
当然のことながら金融政策だけでは市場インパクトは限定的ということなのだろう。為替は116円台で1週間前のマイナス金利導入発表前の水準で元の黙阿弥。日経平均株価は金利発表直前の16953円を下回っている。何より決算発表に伴う企業業績の急速な伸び悩みが足元を見つめさせてくれる。
全体の47.9%が第3四半期決算を通過。今期通期純利益は再びマイナス4.9%と悪化。損失は何でもかんでも今のうちにという心理もあるのだろうがそれにしても鈍い。FRBがどうの、中国のGDPがどうの、原油動向に一喜一憂どころではない。まずは足元からというのが相場の鉄則だが、これを忘れては高級な世界観などなんの役にも立たない。

東証投資主体別売買動向では先週の外国人は2073億円売り越しで4週連続の売り越し。信託銀行は2707億円買い越しで10週連続。1月月間では外国人が1兆555億円と5ヶ月ぶりの売り越し。こいつが犯人だったことは間違いない。そして個人は7973億円と4カ月ぶりの買い越し。海の向こうからの攻撃には真っ向から対抗した構図。日立の500円割れなどを見ると「まだオイルマネーの売り」なんてことも惹起されるのが良くない傾向。失業保険申請者数の増加や製造業受注の悪化で米足元の経済指標は良くない。しかしそれを背景に利上げ観測がさらに後退。だから株は上昇という解釈。足元実態が悪いが株は買われる。足元実態が良いと利上げ観測で株が売られる。どちらの解釈が正しいのかは時間が決めるのだろう。
しかしこの裏腹な動きこそ市場の本質なのかもしれない。好業績発表で売られ、業績低下で買われる時の「出尽くし感」みたいなもの。それだけ相場は素直ではないといいうことになる。疑い深い猜疑心と根拠の薄い楽観論が同居している場所でもある。
日経平均株価は16819円と4日続落。この1週間で35兆円の時価総額が消えた。ヤマハ、住友鉱が上昇。アルプス、丸井が下落。

(2) 欧米動向
また変になってきたのがアメリカのGDPと金融引き締めの解釈の関係。
10〜12月のGDPが年率換算前期比0.7%増で着地。
7〜9月は2.0%増だったから悪化した。
ところが市場の解釈は「早期利上げ観測後退」。
これを受けてNY株式市場は上昇。
景気が悪いのに金利面から株価が上昇するのはどこは不自然な展開。
次のポイントはここになろうか。
因みに2015年通年の実質GDPは2.4%増。
第4四半期の在庫投資は686億ドルで第3四半期の855億ドルからは減少。
個人消費は2.2%増で前期の3.0%増と比べて鈍化。
税金や物価変動を調整した家計の可処分所得は3.2%増。
貯蓄は第3四半期の7006億ドルから7393億ドルに増加。

(3)アジア・新興国動向
2014年6月に4兆ドル近くまで膨らんだ中国の外貨準備。
2015年末には3兆3300億ドルと2割減少した。
12月は過去最高の1079億ドルの減少。
1月は995億ドル減少して3兆2390億ドル。
「外貨がさらに減り、投機筋の標的になった時、中国政府や世界経済は耐えられるのか」との賢い声もある。

かつてデフォルトしたアルゼンチン国債の返済案の合意。
2001年にデフォルトしたアルゼンチン国債の全額返済を求めたいたのがイタリアの投資家。
約5万人の投資家に対し13.5億ドル(1600億円)を現金で支払うという。
もっとも元本9億ドル+利息で25億ドルを求めていたから約半分だが元本の1.5倍。
というか、明るい材料の一つ。
もっとも・・・。
アルゼンチン国債をたくさん抱いて消えていった国内中小金融機関はどう見るのだろうか。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

5日(金):米雇用統計、貿易収支
週末:中国春節(〜13日)、NFLスーパーボール(サンタクララ)
8日(月):国際収支、景気ウォッチャー調査、インドGDP
9日(火):マネーストック
10日(水):企業物価指数、オフィス空室率、米財政収支、イエレンFRB議長議会証言
11日(木):建国記念日で休場、ユーロ圏財務相会合
12日(金):オプションSQ、X線天文衛星打ち上げ予定、米小売売上高、輸入物価、企業在庫、ミシガン大学消費者信頼感、ユーロ圏10〜12月GDP

8日(月)新月
11日(木)建国記念の日で休場
12日(金)SQ、ポイントの日
15日(月)プレジデンツデーでNY休場
17日(水)ECB理事会
18日(木)ポイントの日
23日(火)満月、ポイントの日
25日(木)ポイントの日

日経1面特集は「マイナス金利の衝撃」。
紹介されたのは永田町の声。
「これでしばらくは円安株高になる」。
甘利氏辞任がマイナス金利のトリガーだとすれば金融政策も少し薄っぺらく見える。
黒田総裁一人相撲では根本的解決にはならないだろう。
スイス国立銀行の例でいけばマイナス金利は6回ほどマイナス幅の拡大の余地があるという声もある。
それこそ未曾有の境地であり未体験ゾーン。
どうせなら少しはバブリーなムードが復活しても良い気がする。
あるいは昔懐かしい「ボロ株」が出てくるのかも知れない。

因みに・・・。
欧州はマイナス金利の導入で先行。
スイスはマイナス0.75%。
スウェーデンマイナス1.1%、デンマークマイナス0.65%。
ECBですらマイナス0.3%。
日銀のマイナス金利は3つのステージとなっている。
(1)これまで積み上げた日銀への預金については0.1%の金利を付ける。
(2)実施中の異次元緩和の一環で、国債の大量購入で自然に増えていく分についてはゼロ金利にする。
(3)2月16日以降に預け入れるお金に対し、マイナス金利は0.1%とする。

(1)の部分が大きく、日銀への預金全体でならせば当面はプラスの金利を確保できると日銀は説明した。
マイナス金利なら貸し出し・投資が増える、と単純にいかない側面は否めない。

「警戒すべきはマイナス金利でなくマイナス思考」なんて声も聞かれる如月相場。
米大統領選挙のスタートともにあれだけ騒いだ中国はどこかへ消えて行ってしまった。
原油がまだ生きているが、昨年のギリシャ問題の行方を思い起こせばまたそうなるのだろうか。
忘れることが好きなのが市場だし、見えないフリをして話題を強調して絞らないと複合思考ができない市場。
厄介な場所である。
「節分天井彼岸底」なんて格言もあったが最近は節分底という方が多いかも知れない。
勝手にそう思っている。
市場では2014年との比較が出始めた。
背景は年初からの下落の相似だろう。
先物価格で考えると・・・。
2013年末終値16320円から2月4日の13920円まで2400円幅14.71%の下落。
その2月4日が節分立春底となり3月7日に15320円まで上昇。
1400円幅10.06%の上昇となった。
ただ13年末値を越えたのは9月29日。
その後10月31日の黒田バズーカで決定的に抜けた歴史。
今年は昨年末19000円から1月21日の15990円まで3010円幅11.94%の下落。
1月29日の黒田マイナス金利砲で一時10%は戻した。
少し戻りは早かったのでまた低迷だが、節分底は節分天井よりも響きはステキである。

幽霊の正体と言うのは見てみれば興味の失せるもの。
年初からの下落過程で儲かった投資主体が売り本尊と考えても良いのだろう。
結論は「CTA(商品投資顧問)」。
「グローバルマクロ/CTA指数」は1月初旬から上昇し昨年末から2%の上昇となった。
背景は上海市場の混乱と原油安。
OPEC総会で減産にでもなれば、あるいは中国が落ち着いてくれば・・・。
動きにつきがちな彼らの行動も逆になるだろう。
回転が逆になればマネーの動きも逆になるに違いない。
そしてマイナス金利はジワジワと財テクの必要性を高めてくるはず。
習性的に長年債券の買いで儲けてきたのが債トレ。
債券運用と言うバカの一つ覚えのような図式しかもっていない彼らの行動は興味深いものがある。
習性的に売りで入る債トレはいないだろうからこの動きに期待したいもの。

(兜町カタリスト 櫻井英明)

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