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2017年01月4週
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01月4週
【推移】


23日(月):
トランプ大統領就任式は通過。特に過激な発言もなくNYダウは6日ぶりに反発した。リーマンショックにぶつかったオバマ大統領の就任式(2009年)は5.28%安だったから上々だろう。
前日までの5連敗も「就任式後に上げるための5連敗だった」という声も聞かれる。もっとも市場の一部では保護主義的な通商政策への懸念が再燃。就任演説の間に株価は伸び悩んだ週末の日経平均株価は今年初の3日続伸。
昨年は3月まで3日続伸がずれ込んだことからすると出だしは上々という印象。日経朝刊では「年初の高値(19594円)以上に押し上げる力はなさそうだ」との指摘。

日経平均株価は246円安の18891円と4日ぶりに反落。トランプ米大統領の就任演説に対する警戒感からの売り物優勢の展開。後場中ごろは日銀によるETF買いの思惑から下げ幅を縮小する場面もあった。
大引けにかけて1ドル=113円台前半まで上昇したことから下落幅を拡大。安値圏で引けた。東証1部の売買代金は2兆2005億円。東芝、キーエンス、旭化成、塩野義が上昇。大塚HD、トヨタ、ソフトバンク、SOMPO、ファストリ、菱地所、東燃ゼネが下落。東証2部株価指数は3日続伸。日経ジャスダック平均は4日続伸。


24日(火):
週明けのNYダウは27ドル安の19799ドルと反落。一時19732ドルまで売られる場面もあった。「就任式は通過したもののトランプ新政権の今後の方向性が見通しづらい」という解釈が聞かれる。もっとも引けにかけては下げ渋っており、政権移行と景気・業績の綱引きの格好。TPP離脱署名や米国外への工場移転に対する課税強化など保護主義への懸念はある。しかしその実現性と影響については推理しがたいという心理だろう。

1896年以降の大統領選挙以降就任日までの政権移行中のNYダウの推移。トランプ大統領は7.26%上昇。フーバー大統領の21.85%に次いで2位だという。逆に高値からの最大下落率はマイナス1.2%で最少。2009年のオバマ大統領就任の際はマイナス21.5%だった。
これを「スムーズな移行」と見るか。「まだ調整の余地」と見るかで相場観が分かれているというのが現状。

大統領の暴走をスタッフが補佐し、大統領への不信を企業業績と景気が下支えるという構図。ハネムーン期間を過ぎてもこの狐狸の動きは続くに違いない。とすれば朝のNY動向に一喜一憂しないことが肝要。「今日は下げたが明日は上げる」みたいなリズムと今は考えるべきだ。

日経朝刊は結構明るい見出しのパレード。「電子部品5四半期ぶり受注増」。「銀行団、東芝への融資継続へ」。「1月月例報告。国内景気、判断据え置き」。「粗鋼生産、足元では回復基調」。「安川電、今期上方修正」。「トランプリスクは好機、米金利3%で日本株買い」。「都心5区オフィスビル37%が賃料引き上げ」。
極めつけは「カブ(蕪)が高い」。

日経平均株価は103円安の1万8787円と続落した。米国の保護主義的政策や企業活動への介入の警戒寒感、ドル円の112円台も嫌気されての売り物優勢の展開。「海外投資家から株価指数先物に売りが出ると現物株にも売りが波及した」との解釈が聞かれる。東証1部の売買代金は2兆2757億円。ソフトバンク、キーエンス、日東電、TDKが上昇。トヨタ、三菱UFJ、安川電、東芝、東芝機、沢井製薬が下落。

25日(水):
NYダウは反発して19900ドル台。この3週間で最大の上昇幅となりS&P500とNASDAQ総合指数は過去最高値を更新した。トランプ大統領が2つの石油パイプライン建設計画を許可する大統領令に署名したことを好感。「トランプ氏は力強いスタートを切った。発言してきたことの多くを実行に移している。

10〜12月期企業決算は悪くなくレンジにとどまっていた相場が一段の高値に向かわない理由はない」。上昇時に採用されるであろう強気のコメントが散見される。NYは上昇時は強気の解釈、下落時は弱気の解釈が採用される場所。そしてそのままそれが通訳される場所でもある。

日経スクランブルでは「為替離れ探る日本株」という見出しだがなかなか呪縛から離れるのは難しい。そのスクランブルで紹介されたのは「日銀のETF買いのインパクト」。買い入れ額増額後の日銀のETF買いの日経平均に対するインパクトは1回当たり約30円。増額後に日銀は約40回の買い入れなので日経平均の押し上げ幅は計1200円。そう考えれば19000円から2万円への道のりは日銀のETF買い50回で済むことになる。とすれば、そんなに難しいことでもなかろう。

「市場にはトランプリスクからの解放に向けた布石が既に打たれている」。それは海外生産の拡大というのが結びだった。株価というのは、下げなければ上がらないし、上がらなければ下がらない。この呼吸の会得は結構難しい。しかし大きな上げは下げのあと、大きな下げは上げのあとというのは古今東西未来永劫の鉄則だろう。
日経平均株価は269円高の19057円と反発。ソフトバンク、ファナック、キーエンス、トヨタ、アルプスが上昇。タカタ、東芝が下落。

26日(木):
NY株式市場は続伸しそろって市場最高値を更新。NYダウはようやく2万ドルに乗せた。1896年以来初のことになる。「トランプラリー、トランプ相場」という表現が復活。トランプ氏が当選してから9.4%上昇したことになる。
トランプ大統領の成長戦略に対する楽観的な見方から株価は再加速した。特に昨日の石油パイプライン建設への署名や製造業に対する規制緩和の方向を好感。「約束された政策の実行への信頼感」が拡大した格好だ。加えて第4四半期の業績発表の好調が追い風となった。

S&P500採用銘柄で既に決算を発表した104社の7割近くの業績が市場予想を上回っている。第4四半期の利益の伸びは6.8%と見込まれており2年ぶりの高水準となる見通し。NYダウは1万9000ドルを超えてから42営業日で2万ドルを達成。
過去2番目に速いペースでの大台突破となった。(最速は1万ドル→1万1000ドルが1999年5月の21日)。
ただ1980〜90年代と比べるとダウが倍の水準に上昇するペースは鈍化。 5000ドル→1万ドルは3年だったが1万→2万ドルは18年かかった。99年のように24日で1000ドルの上昇をするかどうかが注目される。

日経1面トップは「基礎財政収支、20年度黒字化困難。赤字拡大8.4兆円」。その横に「NY株2万ドル突破」。NYは夜中の時間帯から朝にかけての出来事だからこの取り扱いは致しかたないのかも知れない。
しかし、バリューと速報性から行けばどう考えても「NY2万ドル」の方が上だろう。それでも基礎的財政収支を持ってくるところに呪縛を感じる。サウジの国王が3月に来日して経済改革の支援要請をすることの報道は良かったが・・・。

NYダウの2万ドル乗せを背景に大幅高となった昨日の日経平均株価。
ファナックやアドバンテストなどトランプ相場勝ち組みの昨年来高値更新。「トランプラリーの象徴」という声も聞かれる。また信越化、三菱電、積水化、安川電が上場来高値を更新した。新たな動き=ニューノーマルへの伏線と読みたいところ。

過去を振り返ってみれば、東証発表の1月第3週の投資部門別株式売買動向。海外投資家は4週ぶりの売り越し(1039億円)、個人は2週連続の買い越し(105億円)。逆張り個人と上値追い外国人の差が先週の動きに表現されていた。年金動向等を反映する信託は6週ぶりの買い越し(507億円)。下がれば買う売買主体の存在はありがたいこと。

日経平均株価は344円高の19402円と続伸。約3週間ぶりの高値水準となった。NYダウの史上初の2万ドル乗せを背景に買い物優勢の展開。ドル建て日経平均も2000年6月以降の最高水準となった。
東証1部の売買代金は2兆7423億円と拡大。今年最大となった。東証1部の値上がり銘柄は1599。新高値は186銘柄。ソフトバンク、ファナック、ファーストリテ、東エレ、アドバンテストが上昇。LINE、国際帝石が下落。

27日(金):
NY株式市場は高値圏での小動き。NYダウは3日続伸したがNASDAQ総合株価指数とS&P500は小幅に反落した。S&P500とNASDAQの上値を抑える要因となったのは通信用半導体のクアルコム。売上高が市場予想に届かなかったことから下落した。また新規失業保険申請件数や12月新築住宅販売といった経済指標が弱い内容だったことも背景とされよう。
もっとも「米国株は過去6週間のレンジから明確に抜け出した。一時小休止の動き」との声がある。市場の関心はトランプ政策と企業業績。その企業業績だが第4四半期の利益見通しは7%増。過去2年間で最も高い伸びが見込まれている。多少政策への疑念が生じても足元の企業決算がそれを打ち消す格好だ。

日経平均株価は65高の194673日続伸。3週間ぶりの高値となった。もっとも過去2日で600円ほど上昇しており上値は重い展開。東証一部の売買代金は2兆4304億円。国際帝石、東芝が上昇。信越、積水化学が下落。

(2) 欧米動向

注目されたトランプ大統領の就任初日の政策。
(1)米労働者のコストを下げるエネルギー政策→OPEC依存からの脱却
(2)力を通じた平和構築→ISやイスラム過激派テロ断絶
(3)雇用を殺す規制を緩和→2500万人の雇用創出
(4)他国が米国の軍事力を上回ることを許さない→ミサイル防衛システム開発
(5)すべての米国民の安全確保のために戦う→国境に壁、ギャング・不法移民・薬物流入阻止
(6)米国民はワシントンのエリートを利する協定を強いられてきた→TPP離脱・NAFTA再交渉
(7)気候行動計画破棄
(8)オバマケアの撤廃
バック・トゥー・ザ・フューチャーのビフのような容貌からは伺えないが意外とマトモな気がする。
もっとも減税やインフラ投資が消えたのは残念。
そして・・・。
就任して最初に合う首脳は英国のメイ首相。
当初予定の安部首相は消えた。
「英米の特別な関係」と言う指摘もある。
英米のFTAの可能性の一方でTPPはなくなる。
この行方は感情論ではなく勘定論で気になるところ。
自動車の左側通行を貫くか、右側通行に変更するかというくらいの分水嶺になろうか。
因みに・・・。
いまだに左側なのは日本、豪州、インド、シンガポール、香港、インドネシア、タイなど。
アフリカやケイマンなど西インド諸島にも多い。

最近話題になってきたのはキッシンジャー元国務長官。
93歳という年齢でも影響力は衰えていない。
11月の日経のインタビューは以下のようなものだった。
安倍総理が11月に訪米してトランプ氏と会った時のアレンジャーが同氏だったという話もある。

★「ある国と我々が同盟関係に入ったとする。
それは我々が彼らの願いを聞きいれた訳でもなく、彼らが我々のそれを聞きいれた訳でもない。
ただ双方の国の国益を反映しただけなのだ」。

国家は理念でなく国益で動くということ。
最終的には理ではなく利。

★「米国新政権がまず取り組むこと。
それは、中国ロシアが何を成し遂げようとしているか。
彼らは何を妨害しようとしているか。それを誰とするのか。
その目的の達成のために誰が我々に懸念を与えるか。
これを自問することだ」。

アメリカの政治的・地政学的存在がある。

★「日本は独自の国益に則って、物事を決められなければならない。
我々の課題は我々の国益を日本の国益に関係づけることであり日本の外交政策に関係づける
とではない」。

日本株高への連想。

月曜の相場、日経平均は大幅安。
しかしマザーズ指数は続伸、ジャスダック指数は4日続伸。
ストップ高はCAP(3965)。
AIを使った遺伝子型相続分与はリアルで見るとすごかった。
あるいはリネットジャパン(3556)。
ネットのリユースはリサイクル関連。
リファインだって似たようなもの。
相場はテーマに忠実になってきた印象。
グレイスとかデファクト、G−FAC、アイリッジ、ジオネクストなどなど。
指数がだめなら個別があるさ、なんて感じだろうか。

10億ドル損失のジョージ・ソロス氏は「トランプ大統領は失敗すると確信」。
トランプ支持派で株を買い増したジョン・ポールソン氏は「法人減税が決まればEPSは増加」。
バンカメメリルは「ドル円は春に120円を達成。121円の可能性もある」とのレポート。
ジム・ロジャースは「貿易戦争はいつも破滅を招き、本当の戦争に導かれる。
トランプ氏が良いことをすれば再び良い日が訪れるだろう。
ドルは2018年にかけて上昇し続ける」。
誰もが言いたい放題のポジショントーク爛漫だ。

(3)アジア・新興国動向

興味深い指摘は大和のテクニカルレポート。
テーマは「中国市場の長期休場は日本株高」。
中国市場は27日から春節で1週間の長期休場。
年初から春頃まで世界の株式市場は全体的に季節性が良い時期にあたる。
アジアの中でも大きな市場となった中国株式市場は春節で長期休場となる。
中国株の代替投資先としてのヘッジ的な買いが、流動性の高い日本株に入りやすいのだろう。
これが過去の中国の春節休みの時期に日本株の堅調な動きが多く見られた背景のひとつ。
近年の春節休み期間中には、中国やアジア各国から多くの観光客が日本を訪れる。
観光地の賑わいやインバウンド消費の拡大などが市場の話題となる。
これも日本の株価にポジティブに働くと見られる。
最近では10月の中国の国慶節休みの期間中にも日本株が堅調となる傾向が見られる。
秋はヘッジ目的の日本株買いがある。
そして年度下半期入りによる株式需給の変化も影響しているのかも知れない。
ヘッジ目的の日本株買いに加えて、日本の年度下半期入りによる株式需給の変化も影響し
ているのかもしれない。このように、中国の長期休場時に日本株が堅調となることは、春
節の時期のみならず、秋にも意識しておくべきアノマリーといえよう。


【展望】

スケジュールを見てみると・・・

30日(月):日銀金融政策決定会合(〜31日)、米個人所得
31日(火):黒田日銀総裁会見、展望レポート、失業率、鉱工業生産、米FOMC(〜1日)、シカゴ購買部協会景気指数、メキシコGDP
 1日(水):米ADP雇用レポート、ISM製造業景況指数、中国製造業PMI
 2日(木):マネタリーベース、消費動向調査
 3日(金):日銀金融政策決定会合議事要旨、米雇用統計、ISM非製造業景況指数、製造業受注、EU非公式首脳会議(英国除く27カ国・マルタ)

大和のレポートは「為替前提100円の外需銘柄」(決算発表日順)。

日電産(6594)、アドバンテスト(6857)、ファナック(6954)、信越(4063)、JSR(4185)、ガイシ(5333)、住友重(6302)、村田(6981)、任天堂(7974)、日立(6501)、三井化学(4183)、住友電工(5802)、三菱電(6503)、ローム(6983)、重工(7011)、アイシン(7259)、古河電工(5801)、ディスコ(6146)、トヨタ(7203)、住友鉱(5713)、ケーヒン(7251)、旭化成(3407)、ダイキン(6367)、東レ(3402)、アマダ(6113)

NYダウの2万ドルは海の向こうの話。
しかし萌芽というのがあちこちに登場し始めた。
「ジャスダック、11年ぶり高値」。
7日続伸で2006年1月以来11年ぶりに高値を更新した。
「1月のジャスダック高」というアノマリーはあるが、主力株の割高感と好業績が背景。
そして東証2部指数も11年ぶりの高値。
「中小型株に春の気配」なんて見出しもある。
かと思えば「ドル建て日経平均上昇」。
昨日は170.87ドルと2000年4月のあのITバブル以来16年ぶりの水準まで戻った。
こちらは「世界でも割安な水準にある金融株に再び目を向けた」との解釈。
予想益まわり5.80%の株の世界に対して10年国債利回りは上昇したとはいえ0.085%。
どちらに分があるかは鳥でもわかる筈。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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