NF-κBデコイオリゴ核酸
パイプライン状況
NF-κBデコイオリゴ核酸(エヌ・エフ・カッパ・ビー デコイオリゴ核酸)
遺伝子をターゲットにした医薬品にはHGF遺伝子治療薬のように遺伝子そのものを利用するもの以外にも、核酸合成機で作成される比較的短い人工核酸により遺伝子の働きを制御するものもあります。
このタイプの医薬品は、核酸医薬と呼ばれ、デコイオリゴ核酸、アンチセンス、siRNAやアプタマーなどが知られています。
当社が開発しているNF-κBデコイオリゴ核酸は、この核酸医薬の一種です。 遺伝子が発現する際、転写因子と呼ばれる蛋白質がゲノムの特定の配列領域に結合してスイッチが入りますが、デコイオリゴ核酸は、そのゲノム上の転写因子結合部分と同じ配列を含む短い核酸(DNA)を人工的に合成したものです。 デコイとは元来「おとり」を意味する言葉で、デコイオリゴ核酸は細胞内においてゲノムの「おとり」として特定の転写因子と結合するため、その転写因子がゲノムに結合できず、結果としてその遺伝子の発現が抑制されます。
当社では、生体内で免疫・炎症反応を担う遺伝子群のスイッチ『転写因子NF-κB』に対する特異的な阻害剤『NF-κBデコイオリゴ』を設計し、NF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の新しい治療薬として研究開発しています。
アトピー性皮膚炎
NF-κBデコイオリゴは、転写因子を特異的に抑制するという特徴があることから、アトピー性皮膚炎の効果的で副作用の少ない画期的な治療薬となることが期待されます。
当社は現在、中等症以上の顔面のアトピー性皮膚炎を適応症としてNF-κBデコイオリゴ軟膏の開発を進めています。
椎間板性腰痛症
椎間板性腰痛症は、椎間板変性などに起因した慢性的な腰痛疾患で、特に中高年層に多い疾患です。変性椎間板において、IL-1 やTNF-αなどの炎症性サイトカインやMMP などの細胞外基質の分解酵素に加え、NGF やCOX2 などの痛み関連分子が誘導されますが、椎間板細胞を用いた実験においてNF-κB デコイオリゴは、これらの病態因子の産生を抑制することが確かめられ、更に椎間板変性症モデル動物において有効性が示されています。このことから、NF-κB デコイオリゴは慢性腰痛に対する鎮痛効果と共に、椎間板変性に対しても有効な可能性がある新しいタイプの腰痛治療薬として期待されます。