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「自信」
「自信」
「自信」
 
東証1部上場のIT企業の創業会長の話が印象に残った。

創業から長い間。
年始回りというとまずは銀行の支店長のところに行った。
年初の仕事始めは取引先よりも数行の銀行の支店長に「今年もよろしくお願いします」。
成長のための資金繰りこそ優先事項という状況だったからこれが重要な年中行事だった。
そういう企業ばかりだったから銀行支店長のところは門前市をなす状態。
数十社のトップや財務部長が毎年来る風景だった。
なにしろ資金がなければ成長は止まってしまうのだから当然だったろう。
ゴルフや会食の接待も数多く行っていた。
ただ、上場以降はこれに証券会社の事業法人部や引受部が加わった。
当時としては珍しかったことだと思う。
しばらく両方を訪ねる年始がが続いた。
でも銀行の方が用事がなくなってきたのが現実。
「貸し出しはいくらでもします」と言われても、必要資金は潤沢。
売り出しでも債券発行でも何でも可能になったので必要がなくなってきた。
コロナ禍の影響もあってこの3年は銀行へは年始回りに行かなくなった。
証券会社だけは続けている。
というか、証券会社に行くことは銀行にいくよりも意味があるからだ」。
「銀行よサヨウナラ、証券よコンニチワ」と言われたのは1960年代のこと。
それでも肌感覚で感じることはなかったのが現実。
しかも運用中心のリテールの世界での話だった。
事業法人の世界で証券会社の営業マンが年始回りに行くのは当然のこと。
でもプライム市場の上場企業のトップが年始にあいさつに行くのが証券会社。
IPOを控えた会社やIPO直後の会社の話ではない。
プライム市場確定の東証1部上場企業のトップの話。
風景は明らかに変化してきたような印象だ。
おそらく現場の証券マンはこの変化には意外と気が付いていないのかも知れない。
「間接金融の世界から直接金融の世界へ」はお題目ではなくなってきたようだ。
その意味では証券界も媚びることではなく自信を持つことが必要になってこようか。
 
そして同会長氏。
「成長と分配は毎年行っています。
5%成長すれば3%の賃上げ。
25%成長だったら20%の賃上げ。
それを実行してきました。
年収600万円→800万円。
年収800万円→1000万円。
年収1000万円→1300万円。
この世界を描いてあげることで社員は成長を目指して動いてくれます」。
つまり鶏と卵の話のようだが成長の絵図を具体的に示し分配の未来像を絵描くこと。
多くの企業がこれを行えばよいだけのこと。
「非正規社員が多いから収入が上がらない」なんてことはなくなる。
加えて、賃上げ企業には税制優遇をするというのが政府の方針。
税務効果だけでも賃上げはできるはずだ。
政府は個々人の能力を高める施策に4000億円を投入という。
勉強して知識をつければ成長するのだろうかという疑問も残る。
「現場の売り上げと利益が成長すれば分配を増やす」。
単純な方が分かりやすい。
 



(櫻井)。