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2015年10月21日
知ればする!! え、自宅は妻に贈与
住宅に関する贈与の特例のひとつである「贈与税の配偶者控除」について、よく理解しておくようにしましょう。ぜひ検討、活用してみたいものです。

住宅関係では、贈与税の配偶者控除という制度があります。これは大変有利な制度なのです。

「夫の余命が幾ばくもない」と宣告されてからの贈与であっても、確実に2000万円分の財産を減らすことができる。とはいっても、余命宣告された夫に「相続税がかかるから贈与してほしい」などは、口が裂けても言えないですね!やはり、元気なうちから対策を立てておくことが大切です。

『結婚して20年以上の夫婦が、お互いに居住用の不動産を贈与しても、2000万円まで非課税になる』というものですが、贈与税の基礎控除110万円を加えて、その年に2110万円分の贈与が無税でできることになります。

これを活用すると、たとえば自宅を所有している夫が、自分の死後に相続税が発生してしまいそうだという場合に、2110万円分の名義を妻に移すことができるのです。

さらに、この制度を利用して自宅を夫婦の共同名義にした上で、その居住用不動産を売却すると、夫・妻それぞれ3000万円まで、合計でなんと6000万円の売却益が非課税になるという。

※ポイントは、土地だけでなく家屋も共同名義にして、『居住用不動産』という条件をクリアしておくことです。
贈与税の配偶者控除とは?
贈与税の配偶者控除は、『夫から妻へ』、『妻から夫へ』いわゆる夫婦間での居住用不動産の購入、又は、その建築資金を贈与したときは、2000万円までは贈与税がかからないという特例です。

簡単にご説明すれば、夫婦間で居住用の不動産を購入するための贈与であれば2,000万円まで税金がかからないということです。

さらに、基礎控除額の110万円を加えれば、2110万円までは税金を払わずに配偶者に贈与可能です。
※贈与税の配偶者控除と、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)は間違いやすい論点ですので気をつけましょう。

通常、生前贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものは、相続財産にプラスして相続税を計算しなければなりません。

ところが、贈与税の配偶者控除の制度により贈与された財産は、相続開始前3年以内であっても相続税を計算するときには相続財産にプラスされません。

緊急に相続税対策が必要なときは、贈与税の配偶者控除を利用することで効果があります。

贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、下記の条件をクリアしなければなりません。
ポイント 婚姻期間が20年以上であること
・婚姻期間が20年以上である配偶者からの贈与であること
・贈与される財産は、配偶者が住むための不動産、あるいは配偶者が住むための不動産を購入するための資金であること
・贈与された年の翌年3月15日までに生活を開始し、その後も引き続いてその場所に住むことが見込まれること
・同じ夫婦間において、既に配偶者控除の適用を受けていないこと
・贈与税の申告をすること
婚姻期間が20年以上というのは、入籍してから贈与された日までの期間が20年以上という意味です。

入籍をしたのがいつだったのか、念のため戸籍で確認しておくことが望ましいでしょう。

また、あくまでも入籍している期間で判断しますので、婚約中の期間・事実上の婚姻関係である期間は、この20年にはカウントされませんのでご注意ください。

■贈与される財産は、配偶者が住むための不動産、あるいは配偶者が住むための不動産を購入するための資金であること
配偶者が住むための不動産は、住宅の敷地のみでもよく、借地権も対象となります。また、これらの不動産は日本国内にあるものに限られます。贈与された財産の名義は、夫と妻の共有名義で構いません。

■贈与された年の翌年3月15日までに生活を開始し、その後も引き続いてその場所に住むことが見込まれること
ポイント 居住期限の要件に注意が必要
贈与された財産が、配偶者が住むための不動産であり現在夫婦で住んでいるのであれば、この条件をクリアすることは問題ないでしょう。
もし、配偶者が住むために新たに不動産を購入するための資金であるときは注意が必要です。
不動産を購入するための資金であるときは、新たに不動産を購入したり建築したりすることが想定されます。
既に建築済みの不動産であれば問題ないでしょうが、注文住宅のように建築する場合、建築計画が遅れ翌年3月までに完成していないような状況になれば、生活を開始することができません。
生活できなければ、贈与税の配偶者控除の適用を受けられませんので、建築する場合には完成・引き渡しの時期に注意しなければなりません。

■同じ夫婦間において、既に配偶者控除の適用を受けていないこと
贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者間について一生に一度しか適用できません。

贈与税の配偶者控除は2000万円まで贈与税が非課税となりますが、もし1000万円の贈与を行い、まだ1000万円の枠が残ったとしても、後日1000万円の枠を使えるわけではありませんので注意が必要です。

■贈与税の申告をすること
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告をしなければなりません。
贈与税がかかるのであれば、贈与税の申告期限までに贈与税を払う義務があります。
贈与税の配偶者控除により贈与税がかからない場合でも、贈与税の申告は必要です。
贈与税を計算するときの不動産の評価額は、相続税評価額をそのまま使用します。
土地の相続税評価額は、都市部では路線価を使用し、路線価がない地域では固定資産税評価額が基準となります。
家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま使用します。
詳しくは、国税庁HP:「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」をご参考にしてください。

次回は、贈与税の配偶者控除は本当に有利なのか?を紹介します。