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2015年10月23日
杭だけに・・悔いが残る 旭化成
旭化成の杭問題は色々話に食い違いがあり悔いの残る結果になりそうだ。
三井不動産グループが2006年に販売した横浜市都筑区の大型分譲マンションで基礎工事の施工不良が見つかり、建物が大きく傾いている問題。施工データの改ざんに関与した旭化成建材の親会社、旭化成の浅野敏雄社長は10月20日午後、本社近くで記者会見を開き、頭を深く下げた。

結果、40年以上かけて築き上げてきたブランドに、一瞬にして大きな亀裂が走った。

杭工事を請け負った旭化成建材がこれ以外にも過去10年間に担当した約3000棟に及ぶ物件を国土交通省に報告することになっている。

この中にはマンションだけでなく、学校や発電所なども含まれているという。ただ、他の物件にも施行データの偽装があった場合、欠陥の発見には時間がかかる。順次調査を進めていくことになるが、波紋はさらに広がりそうだ。

旭化成建材は22日、過去約10年間に杭打ちした全国3040件の概要を国土交通省に報告し、公表した。データ改竄(かいざん)した男性の現場管理者が関わったのは41件で、1都8県に及ぶ。施設名は明らかにしなかった。都道府県別でみると、北海道が最多の422件。和歌山県と沖縄県はなかった。用途別では、集合住宅が696件で最も多かった。

用途別では、工場・倉庫が2番目に多く560件。次いで学校・幼稚園・保育園が342件。病院や介護施設、自治体の庁舎、消防署、駅、空港、橋梁(きょうりょう)なども含まれる。男性管理者が関わったのは、集合住宅が最多で13件だった。

調査は旭化成建材の社員ら約150人が紙の図面を目視で精査。男性管理者が関わった41件を優先するとの公表内容だった。

横浜のマンションが傾いた?原因は?
●問題の概要
(1)杭工事の施工不具合
旭化成建材が施工した当該物件の杭のうち、現時点では6本が支持層に未到達、2本が支持層に到達しているものの支持層への差込が不十分であると推定されること。

(2)電流計データの転用・加筆
施工した杭、計473本のうち、38本に関し、施工報告書において杭が支持層に到達したことを示す電流計データで、データの転用および加筆があったことが判明。

(3)根固めセメントミルクの流量計データの転用・改変
施工した杭、計473本のうち、45本に関し、施工報告書において杭先端を根固めするセメントミルクの流量計データで、データの転用および改変があったことが判明。

施工報告書においてデータに不備があった杭は上記(2)(3)を合わせ、重複(13本)を除くと計70本となります。

(2015/10/20旭化成のプレスリリースより)

●DYNAWING(ダイナウイング)工法の設備について
施工機械、3点式杭打ち機、約120トンの重量の総重量を持つ杭打機、それから30トンのセメントサイロ、それから3連式プラント、それから掘削のロッドという形の主な設備を用いて、施工。

施工機械の外側に管理装置がついており、流量計を代理人が管理をしながら、施工を進めていくという形の体制。

(1)発生残土を大幅に低減
掘削方法と杭形状とに独自技術を採用することで、 従来の埋め込み杭工法と比べ、杭施工時に発生する残土量を大幅に減らすことが可能となりました。 当社のプレボーリング拡大根固め工法(RODEX工法)に比べて約7割も残土量を低減でき、 「環境に配慮した杭工法」と言えます。

(2)高い設計支持力を実現
杭の先端に杭本体径の約1.7倍の 径の鋼製羽根付き杭を使用することにより、同杭径の自社従来工法(RODEX工法)に比べ 約3倍の設計支持力の設定が可能です。これにより、杭の施工本数を減らすことができ、 工期の短縮による経済的な設計が可能となります。

(3)安定した高品質の施工
施工管理装置を用いて、 安定した根固め液の管理を行い、先端羽根部と根固め部とが一体になることにより、 高品質の根固め球根を築造します。

■DYNAWING工法の施工手順について
まず右回転で掘削を進めていく。支持層近くになったら逆転拡大掘削を行いながら、セメントミルクを注入し、根固め部を造成し、最終的には既成コンクリート部を回転埋設自沈接し、根固め部へ定着して施工完了。

(旭化成建材(株)の杭工事施工物件における不具合等についての資料より)
今回のケースは少なくとも8本のくいの打ち込み不足が明らかになっている。仮に従来の工法を採用した場合、全体の支持力で単純計算すると、24本のくいが打ち込み不足になっていることになるが、親会社の旭化成は「単純計算はできません」としている

ダイナウイング工法自体は良いことずくめの工法のようですが、肝心なその工法が使われていないのでは、意味がありません。

ちなみに、今年9月10日、関東・東北での集中豪雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊した際に、濁流の中でびくともしない2軒の白い家が話題になった。それが旭化成のヘーベルハウスだと分かると、ネット上では賞賛の嵐が吹き荒れた。平居副社長は当時、「基礎から時間をかけてしっかりと作るのがヘーベルハウス」と語っていたが、今では自虐的にすら聞こえてしまうから皮肉なものです。

他の物件にも施行データの偽装があった場合、欠陥の発見には時間がかかる。順次調査を進めていくことになるが、波紋はさらに広がりそうだ。

安倍晋三首相は日本企業の生産性向上を目指し、社外取締役の選任など企業統治(コーポレートガバナンス)の強化を推進している。しかし昨今、東芝の不正会計、東洋ゴム工業と旭化成子会社によるデータ改ざん等、相次ぐ不正が発覚している。

日本の内部監査部は、大概はトップやCFO(最高財務責任者)にぶら下がる形になっており、内部通報もトップが関与する不正は握りつぶされている。監査委員会にすべての情報が上がってくる仕組みにしない限り、トップが主導する不正は発見できないだろう。

こうした問題が今、出てくるというのは「浄化への健全な兆候かも知れない」と米投資会社CEOは言っている。コーポレートガバナンスへの変化が本物であり、透明性と説明責任が極めて、極めて真剣に受け止められていることが必要になっている。
横浜市の大規模マンションが傾いた問題で同社グループの旭化成建材によるデータ偽装が取り沙汰されるなかで、全面的な建替えの場合200億円以上かかる見込みなどと伝えられ、様子見姿勢が多いようだ。当分は予断を許さないとの見方があるが、過去、他の銘柄が不正会計や製品の欠陥などによって下げたケースを見ると、損害額や費用の概算額が伝えられた段階で不透明感が晴れ、反騰することが少なくないとされている。

出来高が激増したため、反騰に向けた地ならしは整ってきたとの見方がある。

ムーディーズは、横浜市の当該マンション以外でもくい打ち工事などの不具合が発覚した場合、補修費用増大や旭化成のブランド価値の毀損で重大な負債を抱える可能性があると指摘している。発行体格付けは「A2(シングルAに相当)」で据え置いた。