兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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2016年01月3週
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01月3週
【推移】

12日(火):
先週は戦後初の大発会から5日続落。1950年の指数算出以来の未体験ゾーン。SQ値17420.01円が下に幻で日足陽線。週間では1335円の下落。もっとも、しょぼい反転はしょぼく終わる。
申酉騒ぐと言っても騒ぐ過ぎ。未体験ゾーンの記録を更新中の日経平均株価。先行しているのが米NASDA総合株価指数の8日続落。欧州の株価指数はほぼ4日続落だが前週火曜は反発していた。中国上海株価指数も下落はしているが6日と8日は反発。年が改まって終値ベースでのプラスに遭遇してないのは日経平均とNASDAQ。どちらが先にこの奇妙なチキンレースから抜け出すのだろうか。後付け講釈的に言えば昨年12月の日経平均の戻り高値20012円直後。滅多に見ることのない月足の新値足が7月に陰転していた。
2011年11月の8434円をスタートにしてほぼ3年半にわたり続いた陽線は7月の20585円で陰転。罫線は相場の結果論だから、月足の陰転が株安の原因ではないしかしイヤな感じではあることは間違いなかった。とはいえ逆ウォッチ曲線を月足でみてみると、成熟⇒終焉を終えて新たな誕生を見られるかも知れない水準。

それにしてもタッタ5日の下落は市場心理をいきなりネガにしてしまうもの。でも相場はサイクルという思考法があるとすれば、負けの極地までいけば次はまた明けの明星に遭遇できる筈。因みに指数だけで物事を考えていると破滅的な弱気になりそうだが、個別で見ていると結構元気なものもある。
指数と個別の争いは今のところ個別の勝ち。実態を離れた指数をアレコレ論じることが好きなのが市場だが、あまり人が触れない個別株は相場の原点。IoTとか自動運転など関連銘柄のこのところの強さは、どこかに希望を見つける灯でもある。個の集合体にしか過ぎない架空の数字である株価指数を優先して考える悪弊からは少し離れた方が良いのかも知れない。

日経平均は6日続落で479円安。大発会からの6日続落で騒がしいが萌芽はあろうか。例えば大幅下落で空売り比率が低下しているという奇妙な現象。
大納会33.9%→大発会41.2%→1月7日42.4%。先週末が40.8%で昨日が39.2%と今年初の30%台。大発会と2%程度しか違わないがそれでも40%台と30%台は違う。普通ならば40%台であってもいいはずなのにそうではなかった。
市場関係者の好きな「意図的売買・思惑売買」は既に終焉。提灯筋の売りと追い証回避の現物売りが値下がり銘柄数1890、新安値317銘柄を招いた。そう考えられなくもない。既に冬のうちから植物は春への芽を見えない部分ではぐくんでいるもの。2兆9000億円の売買代金では少し物足りなかった。
日経平均株価は479円安の17218円と6日続落。TOPIXは安値引け。ホンダ、コアが上昇。住友鉱、ピエトロが下落。

13日(水):
今回の下落局面で目立っているのは指数と個別の争い。指数の続落と新興中小型株ストップ高乱舞のコントラスト。指数を見ていると溜息が生じ、個別を見ているとワクワク感。この6日間で昨年からの利益を消した向きがあれば、過去3年の損を取り戻した向きもある。一方的に指数が下がっているから相場が悪いという解釈はできそうもない。もっとも、売り方だけは残念ながら利益局面で儲けているというのも現実ではある。

昨年12月3日に気がついた月足三本新値陰転をダマシと思っていなければ20012円から2800円の下落に備えることは可能だったと言うのが後悔。しばしば見かけるコメントは上げても下げても儲かればよいと言う姿勢。ハイ&ロー的発想の市場関係者が多くなったような気がする。確かに「儲かりさえすればよい」という短期的発想に立てば「売り礼讃」に一部の理はある。しかしそれは、日本の企業と日本の未来を信じた投資家に対する冒涜でもあるような気がする。
そもそも市場は「長期産業資金の調達を通じた企業の繁栄と国民金融資産の育成」を願う場所。そこで「売りで儲けて良かったですね」的発想は通じるのだろうか。株式市場は決してハイ&ローではない。そしてスケジュールと罫線に多少の需給を足して語れるものでもない。人が働いて人が生活している企業という生き物を対象としているのである。

「アベノミクス相場」が始まってから、連敗記録は5が最高。その記録を破ったのが昨年8月18日から25日にかけての6日間。日経平均は2813円(13.7%)下落した。今回の下落幅は1814円(9.6%)だから、8月の方が物凄い下げだった。6以上の連敗記録はというと、2012年11月5日から13日にかけて7連敗。直前の9051円から8661円まで4.4%の下落率。
衆院解散(16日)が決まる前の極めて神経質なマーケットの心理状態を映した続落記録。それには野田政権がその歴史的な役目を終えた、という意味がある。仮に、今回も7連敗だったら、今度は「アベノミクス終わり」ということになってしまいかねない。
騰落レシオもこの日57.86%まで低下(これも、野田政権末期以来の記録)した。
日経平均株価は496円高の17715円と7日ぶりの反発。ヒトコム、関東電化が上昇。イオン、キューピーが下落。

14日(木):
もぐら叩きというかメンタル道場というか市場精通者のコメントは「明日のジョーではないですが、攻めたところに、逆襲喰らったような・・・」。
原油安や米企業収益への懸念から売られたNY株式との解釈。しかし原油は下げ止まっており決算もとりわけ悪化してはいない。つまり下げの原因不明から取ってつけたような言葉。投資解釈において「浮上」とか「後退」などの曖昧模糊とした言葉は意味不明を表現しているに違いない。むしろ日本株の連騰つぶしという被害妄想が浮かんでくる。

上海の3000ポイント割れの影響の半日遅れの到来と言った方がこれも残念ながらスッキリ。夜と昼が逆転した時間差は埋めようもなく、勝手に海の向こうから押し寄せるから厄介なものだ。ようやく到来した「初上がり」の喜びを残念ながらかき消してくれた。年初来JASDAQのドーンが7日連続ストップ高。だから今年の相場はドーンと動くなんてダジャレは通用しそうもない。
CME225終値は結局元の黙阿弥の17200円台。先週末のSQ値17420円を挟んでの上下波動で2勝1敗。「日経平均が500円近く戻しても空売り比率は40.1%」なんて後講釈にしか過ぎない。

日経朝刊では原油安の問題についての解説。「エネルギーコストの削減を単純に喜べない。資源国向けビジネスに悪影響が出る」との声。あるいは「株安や先進国の通貨高、リスク回避の姿勢が実体経済を揺さぶる懸念」とも。原油価格が10%下落すると世界の鉱工業生産は0.76%低下するという。しかし、産油国でなく消費国である日本の場合は事情が少し異なる。ガソリンや電気代が安くなれば企業の経費が減り、個人消費も上向く。

みずほ総研の試算では原油がバレル30ドルになると40ドルの時より実質GDPを1年目に0.11%押し上げる。2年目には企業業績の改善で設備投資が増加。押し上げ効果は0.34%まで拡大する。もしもバレル25ドルまで下がると、2年目に0.51%の押し上げ効果になるという。この波及効果に目をつぶり世界経済の減速を憂うるのが正しいのか。あるいは事実を直視し原油安を礼讃するのが正しいのか。者に決まっているのだろうが、市場は浮気者で小心者なのだろう。他の懸念を持ち出してこの好材料を打ち消している。
因みにタマゴの値段は高値一服。背景は増産と暖冬とされるが、12月にピークを迎えて反落した構図は株価と重なる。興味深いのは「小売り、客単価高めて稼ぐ」の見出し。主要小売84社の業績を集計すると、59社の売上か増加。「高め消費を取り込み、客単価を上げたことが好業績をけん引した」との解釈。過去最高を更新したローソンは野菜飲料で女性を引き付けた。傘下の高級スーパー成城石井も貢献。セブンイレブンは女性・単身世帯向け総菜や弁当が拡大。Fマートは味にこだわったラーメンが奏功。無印良品も素材を改良した脚付きマットなどが売れた。ニトリも高めのソファが好調。ABCマートは訪日客向け高単価スニーカーが人気。
一方でユニクロは客数減に見舞われている。安いから買うという時代は消え、欲しいものを買う時代になっているということ。価格ではなく良いもの欲しいもの。消費者心理はデフレにはもう飽きたのかも知れない。成熟社会での生き残り戦術になるのだろう。そしてココを読み間違えると戦略が徒労となる可能性がある。

日経平均は474円安。前日の496円高がかき消された格好で一進一退。一時700円を超える下落幅で12日の安値17218円を下回った。でも9月29日の16901円には届かなかった。そこからの戻りが300円弱での大引けだったから一つの目途は示された印象。言葉は語られなくても株価と言う数字が語ってくれるのが相場でもある。
日経平均の25日平均からはマイナス7.6%。騰落レシオは62.98%。サイコロは4勝8敗で33.3%。松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス5.846%。買い方はマイナス14.746%。
Quick調査の信用評価損率(1月8日現在)はマイナス12.59%と悪化。日経VIは31.76。とはいえこれらの紙芝居的歯止めはまだ効いている。つまり平時の値動きの範疇での下落。これが効かなくなってくると乱世の相場への移行。そのギリギリの潮目は7日続落手前だった。ただ日経平均採用銘柄のPERは14.41倍でEPSは1196円とこれも悪化。PER16倍で19136円にしかならない。来期10%増益でPER16倍でも21049円。株価の面だけでなく株の面も少し悪化してきている。
日経平均株価は474円安の17240円と反落。TDK、ニコンが上昇。ソニー、マツダが下落。

15日(金):
誰かが買うから株は上がる。誰かが売るから株は下がる。古今東西不変の法則である。しかし、相場は誰かが売ったから下がったではなぜか納得しない。誰が売ったの?
どうして売ったの?この解釈がないまま「意図的売買」で何となく納得させられるから市場は見えなくなる。意図的売買は作為的売買。本体株式市場は「儲けたい」という意図をもった売買の集合体。それとは異なる意図というのは良く理解できない。しかし、そうでない意図的売買が存在するのなら作意的相場形成となるのかも知れない。だったら当然取り締まるべきだろう。と自棄になって当たってみたところで株価が戻る訳でもない。
久々に聞かれたのは「相場は悲観の中で生まれ」のフレーズ。しかし本当の悲観の時には言葉も出ず何も語れない。新聞の活字上は「リスク回避」とか「消極法的に向かった」などが目立つ。お金を何かに投じなければならない機関投資家の立場だけが浮き彫りになった格好。そもそも消去法で債券を買う個人投資家はいない。こういう時に証券マスコミが誰を対象にしているのかが良く理解できる。

「リーマンの教訓今こそ」なんて日経1面には踊っている。サブタイトルは「万一の備え急げ」。しかし結論は「歴史は単純に繰り返さないにしても傍観は禁物だ。金融・財政政策を含め、リスクに対処できる体制を整えることが、必要な局面である」。言葉は立派だが誰に何を求めているのかなかなか理解不能。どうリスクに対処するのか。政府や金融当局に何を求めているのか。個人でいえば株を売ってしまえば良いのかどうか。トレンドチックな曖昧模糊とした警鐘であるならば意味がなかろう。
長期金利の過去最低の0.190%に遭遇してまだ下がると見るのかもう底と見るのか。小賢しい既成概念で相場を見てはいけないことだけはわかった。もっとも10年国債利回りは0.19%と過去最低を記録した後は0.230%に上昇した。たぶん重要なのは後場に明日のNY動向を考えて推理することなのかも知れない。
あたり前と言えば当然のことだが、所詮全体市場の主役は残念ながらNY。彼らが寝ている間に、チマチマとした尻尾のような東京市場のことなど考えはしない。胴体が動けば尻尾は動くのだから戦場のカナリアのような東京市場では夜の動きを読まざるを得ない。ひょっとすると東京とNYのリズムを読むことが重要なのかも知れない。不協和音なのが調和しているのか。そのハーモニーを感じることは短期的投資家には結構重要だろう。

やはり、というかそうだったかというのが裁定買い残の減少。1月8日のSQを過ぎた時点で、つまり5日続落時点で裁定買い残は7421億円減少。昨年6月以来約7カ月ぶりの減少幅で2兆5597億円となった。7500億円の減少で日経平均株価は1335円(7%)の下落。今週も減っているだろうから、もう悪さをする原資も尽きてこようか。

24か月移動平均が17510円水準。そして先週末の日経平均は17697円。ココを上回ってくれれば第1週よりも上になり月末まで頑張れる基準となる。月足陽線基準は18450円。昨年末なら見下ろしていた水準だが今ははるかな峰に映る。誰も言及しないのが東証1部の単純平均株価。前日段階で2763.87円。昨年末は3066.29円だった。それだけでも大きな下落。しかし昨年初は3042.60円、昨年安値は10月の2906.63円。ココは完全に下回っている。その前の安値は2014年10月の2693.50円。そう遠くない地点まで残念ながら来ている。そして、この水準こそが市場心理の重苦しさにつながっていようか。
因みにバブル期には19130円だったのが歴史。「経済の実態は日経平均株価より、単純平均株価の方が良く表している。まさに日本のデフレ環境の実態を、この単純平均株価は物語っている。

1月第1週(4〜8日)主体別売買動向では海外投資家が447億円の売り越し。オイルマネーの「換金売り」との声も聞かれる。一方、個人投資家は5814億円の買い越し(うち、現物が4000億円近い買い越し)。「外国人売り対個人の現物買いの構図だった。
日経平均株価は93円安の17147円と続落。JR東、ヤマダ電が上昇。三菱UFJ、イーレックスが下落。

(2) 欧米動向
結局、米利上げに加えて中国や北朝鮮まで登場した今回の下落。
一番影響したのは原油価格の下落だったのだろうか。
ここにきて先行きの見方が分かれてきた。
一つはトレンド追随型のコメント。
「6年半後の2022年6月まで50ドル未満の価格が続く。
2017年12月渡し終値は1バレル=42.20ドル、18年12月渡しは45.35ドル。
限月カーブ全体が下方シフトしていると指摘されている。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は世界的な原油の供給過剰が17年第3四半期あたりまで続くとの見通し。
バークレイズは16年のWTIの価格見通しを37ドルに引き下げ。
ソシエテ・ジェネラルが示した最新価格見通しは40.50ドルに下方修正。
スタンダード・チャータードは最悪の場合、原油価格が10ドルに沈む恐れがあるとみている」。
もうひとつは今朝の日経朝刊での指摘。
「重要なのはシェールの時代が続く保証がないこと。
IEAは2020年代に入るとシェールオイルの生産量は頭打ちになると予測する。
IEAの事務局長は、今油田開発が滞れば、将来急激に価格が高騰するリスクがあると指摘する。
原油安の長期化はいずれ破裂するリスクをため込むことに注意しなければならない」。

REITの話題。
米不動産運用のプロのコメント。
「中国でも需要が供給を上回る状態なのはネットショッピングの恩恵を受ける物流や倉庫施設。
昨年の東証REIT指数は8%下落したが、高利回り銘柄の郵政3社への資金移動の影響は大きかった。
低金利の継続で長期金利と上場REITの分配金とのスプレッドは3.3%まで拡大。
過去の平均を0.5%上回っている。
年間成長率は高くないだろうが相対的な利回りの高さを評価。
東証REIT指数は年間12%程度の上昇を予想する。
注目はオフィスとホテル。
最近では金融の丸の内よりもテクノロジーの渋谷の方が収益拡大機会が多い。
インバウンド効果でホテルの収益も年間10〜20%の伸びだ。
ヘルスケアも期待分野。
米国ではヘルスケアがREITに占める割合は大きいが日本はまだまだだ。
米国で最も強気なのは賃貸住宅。
若年層の需要は拡大している」。

(3)アジア・新興国動向
「三菱UFJ銀、フィリピン大手銀に出資」の報道
TPPなどで重要性を増す東南アジアでの足がかりは悪くはなかろう。
しかし、象徴的だったのは三菱UFJの時価総額が直近、従来の2位から4位に転落したこと。
1位のトヨタは不動だが、2位NTT,3位ドコモと通信セクターに抜かれた。
NTTやドコモに抜かれるのは2012年秋以来のこと。
というかアベノミクス発足以来初の出来事。
加えれば海外投機筋の円の持ち高も12年10月以来の買い越し。
底流では地殻変動が少し起きている。
外ばかり気にしているが足元も少し揺れていることになる。

年初からの世界的株安。
年初から7日までの間に世界10カ国の株式時価総額は3.5兆ドル(410兆円)消えた。
昨年末の世界時価総額は54.6兆ドル(6400億円)。
因みに上海・シンセン・香港で150兆円、日本が30兆円、インド17兆円、韓国4兆円。
結構な消え方であった。
原油安に伴う産油国特にサウジのオイルマネーの逃亡だという見方もある。
あるいはマネー創造のためにサウジが同国の石油輸出会社サウジアラムコのIPOを模索しているとも・・・。
時価総額ではエクソンモービルの37兆円を上まわると試算されている同社。
もしも本当にIPOがされるのなら、資金の吸い上げはかなり大きなストローで行われそうだ。

そして最近騒がれるのは「魔の10時15分」の声。
中国人民銀行が人民元の基準値を発表する時間であり、東京市場のボラが急上昇してきた。
人民元安→円高ドル安の構図を見てからの株売り。
単純だが無視できない。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。

15日(金)米小売売上高、生産者物価、鉱工業生産
18日(月)米休場(キング牧師誕生日)、世界未来エネルギー・国際水サミット(アビダビ)
19日(火)首都圏マンション販売、対米証券投資、ZEW景況感、中国GDP
20日(水)世界経済フォーラム(ダヴォス〜23日)、米住宅着工件数
21日(木)ECB理事会
22日(金)米中古住宅販売、シカゴ連銀全米活動指数
24日(日)満月。
26日(火)FOMC、水星順行開始。
28日(木)日銀金融政策決定会合、ポイントの日。

昨年(取引日244日)の日経平均「曜日別」勝敗。
 ↓
・月曜日 21勝25敗 (勝率約46%)
・火曜日 24勝25敗 (同49%)
・水曜日 28勝19敗 (同60%)
・木曜日 35勝16敗 (同69%)
・金曜日 31勝20敗 (同61%)

年初から起きていることは売る必要を持った向きの売り。
業績もなにも関係なくキャッシュが必要だから売らなければならないという理由。
市場は冷酷な場所で落ちた犬に石を投げる場所。
だからヒトの不幸をネタにした売りにその他大勢が乗じる場所でもある。
しかし本尊の売りが終われば「そして誰もいなくなった」。
あとは買い戻し競争やチキンレースにいとも容易く変身する場所でもある。
買う必然性を持つ向きは滅多にいないが、売る必然性はいつでも生じるもの。
そしていつでも換金売りが可能なのが株式市場の特性でもある。

8日付け日経朝刊「大機小機」は「輸出は勝ちという幻想」だった。
「企業の多くは目の肥えた日本の消費者向けの商品開発だけでなく、
中国など新興国に安く売ることばかり考えているようだ・
これでは内需は増えず、経常黒字が増えるだけだ。
(そして円高→失業増→総生産減少のスパイラル)。
企業にとっては効率化による販路拡大も、内需の掘り起こしも、同様に業績改善につながる。
しかし前者は円高を生んで日本の経済を損なうが、
後者は円高を生まずに雇用を拡大する。
かつてホンダもソニーもわくわくするような商品を提供してくれた。
企業には新興国需要に頼らす、日本人が喜ぶ新製品を開発して欲しい」。
モンキーのホンダやウォークマンのサルのソニーが登場しているから面白い訳ではない、
目の肥えた日本人が喜ぶ商品は、インバウンドの爆買いでも証明されたように外国人にも受け入れられる。
安さを切り口にしたビジネスは証券界をみればわかるように成長はしにくい。
富裕層を相手に商売するのが、成長機会。
そう考えれば「ワクワクドキキ」は自動運転を始め、バイオの世界でもロボットの開発でもアチコチにある。
そもそも開発途上国にロボットは要らないと考えればターゲットは明確になってこようか。
マスではなく質を求めることは多少必要なのかも知れない。

そのワクワクについては水曜日経朝刊の「大機小機」の「新たな投資テーマの登場」に如実に表れている。
「21世紀の世界経済における最大の出来事となる第4次産業革命の本番が幕を開けようとしている。
長期にわたって投資家をハラハラドキドキさせる新たなテーマの登場である。
産業革命は蒸気機関の1次、電気の2次、生産工場の自動化の3次を経て、
あらゆるものをインターネットにつなぐIOTと人工知能を融合し、さまざまな産業で活用する4次になる。
あらゆる分野で破壊的な変革が起きる『FOMO』(投資機会を見逃す恐れ)が投資家心理を支配している。
消えていく職種や企業も多いが、投資機会はITやIOTを活用して効率化や生産性向上を目指す企業など幅広い」。
フィンテックの拠点である米シリコンバレーではTシャツにジーンズの若い経営者。
「既存の銀行は急速に衰退し、過去の遺物になる」と公言しているという。
アメリカで起きたことは日本でも必ず起きる。
古くはモータリゼーション、あるいはチェーンストア、マックもコーラもそうだろう。
とすると・・・。
世界を飛び回る日本の経営者がタイムマシンのように日本に降り立って企業を成長させる構図。
幕末志士も明治維新も同じようなこと。
ターゲットが欧州から北米に移っただけのことかも知れない。
それを21世紀に置き換えたら開発・成長の起点に十分なり得る筈。
このあたりを見て行きたいのが2016年になろうか。

(兜町カタリスト 櫻井英明)

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