兜町カタリスト『櫻井英明』が日経平均株価や株主優待、投資信託、NISAなど幅広く紹介していきます。企業訪問を中心により密着した情報も配信中です。

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2016年04月2週
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04月2週
【推移】


4日(月):
週末のNYダウは107ドル高の17792ドルと反発。雇用統計の非農業部門雇用者数は21.5万人増で着地。失業率は5%と悪化したものの背景は労働参加率の上昇であり懸念なく通過といった印象。利上げに至る根拠を持てないものの景気の悪化を示すものではない。週間ベースはNYダウが1.6%、S&Pは1.8%、NASDAQが3.0%の上昇。またISM製造業景気指数は51.8で着地とNYの景気動向は明るい。

「春の日の釣瓶落とし」なんて言葉はないが、日経平均は金曜まで4日続落。しかも堅調な欧米株式と比較すると逆行安の展開。為替の円高傾向による企業業績の悪化と言うのが売り材料との解釈。悪役は外国人投資家。
年初から3月第4週までの売越額は総額5兆円超と暦年ベースで29年ぶりの規模。市場は所詮ゼロサムゲームの世界だからどこかが良くなればどこかが悪くなる。マネーの置き場として現在の東京株式市場は他市場と比較すれば、消去法的にふさわしくないということになろうか。
因みに新年度初日に下落したのは4年連続。「調整のシグナルは連続陰線か大きな陰線。25日線割れと前日にサインはあった」と市場関係者。土曜の日経で塩崎恭久厚生労働相。「80時間超える残業のある事業所に調査対象広げる」と表明。長時間労働減らすよう監視強める方向を打ち出した。そして電機大手などが人材不足のために初任給を2割程度引き上げるという方向も報じられた。長時間労働など問題は多いことは事実。しかしどうも「働くな」と霞が関が言っているとしか聞こえないのは気のせいだろうか。日本経済はどうも休日が多くなってから衰退してきたような気がするのも錯覚だろうか。
日経平均株価は40円安の16123円と5日続落。カネカ、JR東が上昇。トヨタ、コマツが下落。

5日(火):
日経平均株価は月曜まで5日続落。年初の6日続落に並ぶところまできた。ただTOPIXは5日ぶり反発。東証1部の単純平均株価は13.79円高の2553円21銭と反発。単に日経平均株価だけが売られたという印象はぬぐえない。株価下落の材料を海外に求めがちなのが東京市場。でも日経平均採用銘柄のEPSは日々低下してきた。
昨年12月7日に1270円をつけたのが月曜段階で1115円。日経平均は12月7日が19698円で月曜が16123円。下落幅は3575円。EPSの低下は155円ですからPER15倍と計算して2325円。
考えてみれば企業業績悪化での下落が65%、その他要因が35%の比率。65%をあまり語らず35%の中の米金利や原油・中国動向などばかりを解釈しての相場推移。本質を離れ皮相的で大きな声で語られる現象だけを見つめるとこういうことになってしまう。日銀はJPX400中心にETFの購入開始。
NYダウの除数0.2程度に対し除数が25にもなっている日経平均の成長性よりもJPX400の成長性の方が高いと読んだのかもしれない。

興味深いのは相場の時間軸。今年初めて3日続伸したのは3月3日。それよりも遅かったのは95年の3月6日。4月1日新年度初日の日経平均株価は594円安と今世紀最悪の新年度の幕開け。それ以前の最悪はやはり95年の4月3日の758円安。機械が歴史を学び過去の紙芝居チックな動きを取ると考えるなら、その通りを真似た展開。
株価は「日々是新」な筈だが、実は過去の絵解きをしているというパラドックス。過去に例を見ない展開でなければ機械の呪縛から解放されないのだとしたら、これは結構大変なこと。
日経平均株価は390円安の15732円と6日続落。キューピー、ニチレイが上昇。トヨタ、サイバネットが下落。

6日(水):
株式にしても為替にしても市場は経済指標を気にする。スケジュールを相場解釈の理由にする。しかし結果についての反省などは見られないことが多いから不思議なもの。所詮、経済指標は通過することが大切な数字と認識した方が負担は少なかろう。IMFラガルド専務理事のコメント。「政策当局がより強力な手段を打ち出さなければ世界の経済成長に対するリスクが増大する」。これを景気不安材料視したという声もある。ドル円は一時110円を割り込み1年5か月ぶりの安値を付ける場面があった。

安倍首相のウォール・ストリート・ジャーナルのインタビュー。「通貨安競争は絶対避けなければならない。恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」が背景とされる。ただむしろ材料は商務省が表した2月の貿易収支。赤字額が前月比2.6%増の470億6000万ドル。市場予想の462億ドルを上回ったことがドル安の原因となり円高にむかった。そう考える方がまだマシだし説得力はある。
6日続落のあとのSQ週の荒れる水曜日。不穏な状態は継続。「売りが売りを呼び罫線の姿の悪化から負の連鎖が加速」という声も聞かれる。「日銀や政府の対策催促」という指摘も見られる。しかしいつまでも他人頼りだからこそ、外から見透かされるというのがこの市場の弱点。
6日続落は年初以来。4月の3日で1011円の下げとなった。2月12日の時は4日で2412円の下げ。年初は1月12日まで6日続落で1815円の下げ。どこか似ていると言えば似ている。日経の「株年初から17%下落」の指摘はトヨタのPBR0.96倍。アベノミクススタート以来「初の1倍割れ」。稼ぐ力が減った日本企業と割安感との拮抗。「構造改革にしびれを切らした海外マネーの流出」。なんて言われると、そうかなと錯覚しがちだが、構造改革はテーマではなかろう。単純に四半期の期初に売らなければいけないマネーがあるという方がわかりやすい。
日経平均株価は17円安の15715円とアベノミクススタート以来の7日続落。九電、メディカルシスが上昇。三菱ケミ、マネパが下落。

7日(木):
日経新聞左肩の連載「市場の力学」のスタートは月曜日。第1回目は「荒れる相場、変動率が支配」。変動率をモノサシに投資するファンドも資産総額は約130兆円に及ぶ。日本の公募投信の残高を上回る規模だ。金融危機をきっかけに急速に普及したリスク管理手法。「これがかえって市場を不安定にした」。安全志向の高まりが不安定な相場を生む皮肉。投資手法の高度化が進んでも、リスクは形を変えて市場につきまとう。
第2回目は「熟練トレーダーAI参上」。株価が適正価格以下になったと判断したら、自動で株式を買うシステムを開発したSMBC日興。同社のエクイティ本部長のコメント。「機械が支配する市場で先を行くには機械が必要」。機械が支配し始めた投資の世界の先がけが超高速取引。
米投資会社の1238日の取引で1237勝1敗という数字。99円の買いと100円の売りの同時商い。スピードだけが左右するが論理は昔の場立ちの商いみたいなもの。まだ相場観というには遠いのだろうか。3日目は「スター銘柄どこ行った」。「成長への夢よりも、配当を通じたリターンを追う時代が訪れようとしている」。ストラテジストのコメント。しかし「マイナス金利下で投資先をみつけにくい時代。原石を見抜く目が一般の投資家に求められる」。論理は機械とヒューマンに平等になっているが、どうも洗脳されそうな特集である。
日経平均株価は34円高の15749円と8日ぶりの反発で8日続落から逃れた。鹿島、エーザイが上昇。マツダ、カシオが下落。

8日(金):
たった34円高で8日続落を回避してみればシカゴ225先物の終値は15545円と下落幅拡大。「SQでアク抜けとなって欲しい」と市場関係者の本音も聴こえたが大引けの日経平均株価は71円高の15821円銭と市場の想定外の続伸。NY安と円高を背景に寄り付きは売り物先行の展開で前日比278円安の15471円と一時15500円を割れた場面もあったが閣議後の会見で麻生財務相と菅官房長官が円高の進行に対し「場合によっては必要な措置を取る」と口をそろえたことからドル円は108円台後半へ下落。
日経平均株価は一時16000円台を回復した場面もあった。公的年金の買い観測も聞かれる。東証1部の売買代金は2兆5798億円とSQにしては控えめ。業績悪化のファーストリテが大幅下落で日経平均を150円低度押し下げた。日経平均のSQは15507円59銭でこれを大幅に上回っての終値。SQ通過で悪材料消失みたいな印象。上下に長いひげの陽線で追撃売りの可能性は消えた可能性が大きい。
日経平均株価は71円高の15821円と続伸。ビックカメラ、野村が上昇。ファーストリテ、日産化学が下落。

(2) 欧米動向
米国訪問中の安倍晋三首相の消費増税見送りについてのコメント。
「延期をするためには法改正が必要となる。
「法改正」に初めて言及した。
言及したということは頭の中にあるということ。
そして衆院解散については「解散の『か』の字もない」。
増税しない、解散しない。
この「ないないシナリオ」がありそうな気がする。
明るいのはサウジアラビアのムハンマド副皇太子。
石油時代の終幕を視野に、2兆ドル規模の公共投資ファンドの設立を計画しているという。
悪いことばかりではない。

ITバブルや不動産バブルの崩壊を予言したエール大学のロバート・シラー教授。
コメントは「米国株はとても割高だが、投資を止めるべきでもない。
発案した『CAPEレシオ』は20倍台半ば。
株式投資のリターンとしては5%と物足りない。
しかし米10年物国債利回りが2%以下に下がっている中では魅力的」。
日本株のCAPEは1990年前後に100倍近くで世界最高記録となった。
当時日本経済に最も強気だったのは日本人。
だからこそバブルが起きた。
過去20年の平均から見れば、現在のCAPEの水準は高くない。
買いのタイミングだろう。
欧州も悪いニュースが多いが、株価は割安だ」。
現在、日本経済に最も弱気なのは日本人という気がするが・・・。

因みにCAPEレシオとは・・・。
CAPEでは過去10年間の平均利益に物価変動を加味した値を一株利益として指数を算出。
景気循環の影響を調整した株価の割高、割安を見ることができることも特徴の一つ。
景気変動調整後のPERとも言われる。
CAPEでは割高、割安の分岐点は25倍程度と言われている。
26倍を超えたのは、
(1)1929年の大恐慌直前
(2)2000年4月にはじけたITバブル
(3)2008年のサブプライムローン・バブル


(3)アジア・新興国動向
火曜の安部首相は六本木の鳥料理「鶏匠たけはし」で秘書官らと3時間以上滞在。
いかにも長い時間であやしさがある。
月曜は虎ノ門の「アンダーズタヴァン」で塩崎厚労相と世耕官房副長官。
こちらは2時間弱だからフツーのミーティングだったのだろう。
相場は安部首相とオバマ会談の前後での株安。
たぶんキーポイントは先週の訪米だったと考えるのがうがちすぎだろうか。
「円高容認、消費増税延期なし」など想像は広がる。
覚えておきたいのは世界の軍事費。
総額186兆円で1位はアメリカの5969億ドル(2.4%減)。
これは世界の軍事費の36%。
2位中国2150億ドル(7.4%増)。
3位サウジ872億ドル(5.7%増)。
4位ロシア664億ドル(7.5%増)。
日本は500億ドル程度というのが実態。
多いと見るか少ないと見るかだが・・・。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・

11日(月):機械受注、日銀の生活意識に関するアンケート、中国消費者生産者物価
12日(火):米輸入物価、財政収支
13日(水):国内企業物価指数、マネーストック、米小売売上高、生産者物価、ベージュブック、中国貿易収支、韓国総選挙、タイ旧正月
14日(木):首都圏マンション販売、米消費者物価、G20財務相・中央銀行総裁会議、BOE金融政策委員会、
15日(金):米鉱工業生産、NY連銀製造業、ミシガン大消費者信頼感、国1〜3月GDP、鉱工業生産、小売売上高、他経済指標

大切なのはたぶん月曜の日経朝刊の「経営の視点」。
「スマホアプリなど消費シーンの多くは無料化。
本当に欲しい商品にしか、購買意欲が高まらない構図」というのは当たっている。
ヒットのキーワードは「売れるか売れないかよりは面白いか面白くないかを追求」。
パンの表面がカラッ、中は水分たっぷりというトースターが売れているという。
販売している会社の社長のコメント。
「モノではなく、その先の体験にお金を支払っていることに気がついた」。
アップルが軟調でグーグルが好調という構図が象徴的だろうか。
モノという可視商品ではなくサービスやアプリ、ソフトという不可視商品の優勢。
モノづくりは、発展途上国、ソフト化製品こそ先進国の生きる道。
ここを読み間違えたのがシャープだろう。
いつまでもモノとかつくるにこだわると失敗する気がする。
この大きな構図の変化を株式市場は先取りしているのだろう。

ところで・・・。
以下は株式市場の傾向。
株価が上がり始めるまで市場参加者は見向きもしない。
商いの薄さや業績の不満足感を漂わせるコメントばかり。
しかし上がり始めるとマーケットはその銘柄に気がつく。
あちらもこちらも一気にそのテーマや材料を囃したて多くの場合は過熱感。
そして信用規制が入り一端相場は終焉。
でも本物はここで押しても規制などお構いなし。
「我こそはテンバーガー」と糸の切れた凧のように上がり続ける。
でもこうなると、最初に付けた人たちはもう株価についていけない。
だからさらに上がる。
手替わりが何度か行われると、さすがに過熱に気がつきようやく相場も沈静化。
これがフツーの相場なのだろう。
買って売ってさらに上がれるとまた買うことはできない投資心理。
つまり銘柄の成長は1幕のドラマであり売ったあとはいつもエピローグ。
プロローグよりも前日練習などで訓練すればエピローグを迎えるのも先になるのかも知れない。
多くの人に気がつかれるまで我慢できるか、あるいは恐怖の絶頂の高値で持ち続けられるか。
究極の選択ではあるが、どちらかに参加しないことには、市場に乗ることはできないもの。

バックミラーのように過去の結果論を遡れば・・・。
日経平均の25日移動平均線は3月14日にプラス5.49%。
日経平均は17233円だった。
その後の安値は昨日の15698円で下落幅1535円。
その前は11月9日にプラス5.89%。
日経平均は19642だった。
その後の安値は2月12日14952円で下落幅4690円。
結局25日線のプラス5%以上のかい離で売るというセオリーは今のところ効いている。
次に5%プラスかい離したときの教訓になるかも知れない。
「呪縛解放投資戦略」の第1鉄則?
しかし5%もかい離すると心理は「ホッ」ではなく「イケイケ」になっているのだろう。
この心理の綾が相場観を間違えさせてくれるから厄介なもの。

(兜町カタリスト 櫻井英明)

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