小幅続伸13ドル高、景気減速懸念で
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【市況】小幅続伸13ドル高、景気減速懸念で |
29日のNYダウ工業株30種平均は小幅に続伸し、前日比13ドル44セント(0.03%)高の3万5430ドル42セントで終えた。8月上旬以来の高値。
米長期金利の低下が好感され、ダウの上げ幅は一時160ドルを超えた。ところが、米連邦準備制度理事会(FRB)が「経済活動が鈍化した」とする内容の全米12地区の連銀景況報告(ベージュブック)を公表した後、ダウは引けにかけて値を消した。
FRBのウォラー理事が前日の講演で、経済を減速させ物価をインフレ目標の水準まで引き下げるのに現在の金融政策が「適切な状態にあるとの確信を深めつつある」との見方を示した。インフレ率が一段と低下すれば「利下げを始められる」とも述べた。
29日にはクリーブランド連銀のメスター総裁も現在の政策金利が「良い位置にある」と話した。市場では今後の経済データを見極める必要があるものの、FRB高官が利下げに言及したことで市場心理の改善につながったとの見方があった。
米国の利上げ局面の終了や来年以降の利下げの可能性が意識され、29日未明に米長期金利は4.25%と9月中旬以来の低水準を付けた。日中は低下幅を縮めたものの、前日終値(4.32%)を下回って推移した。
朝発表の7〜9月期の米実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率5.2%増と、速報値(4.9%増)から上方修正され、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(5.0%増)も上回った。10〜12月期に成長が減速するとの見方が大勢ながらも「経済がソフトランディング(軟着陸)を達成できるとの見方を強めた」との声が聞かれた。
午後に発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)は「経済活動が減速した」と総括した。労働需給は「引き続き和らいだ」といい、物価は「高水準が続いているものの、各地区で価格上昇が穏やかになってきた」との見方が示された。市場では利上げ停止観測を後押しするとの受け止めがあった。
ただ、買い一巡後は伸び悩んだ。ダウ平均は8月に付けた年初来高値(3万5630ドル)に迫っており、主力株の一部には目先の利益を確定する売りも出やすかった。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は29日の米CNBCのインタビューで「インフレが低下していれば政策金利に対して特に何かする必要はない。だが、インフレが再燃すれば金利を一段と引き上げる選択肢を確保していたい」と話した。先行きの金融政策について「市場はまだはっきりとした確信を持てていない」との見方もあった。
個別銘柄では、取引終了後に決算発表を控えていた顧客情報管理のセールスフォースの上昇が目立った。半導体のインテルや金融のゴールドマン・サックス、スポーツ用品のナイキも買われた。一方、小売りのウォルマートや石油のシェブロンが安い。前日に上場来高値を更新していたソフトウエアのマイクロソフトは反落した。
ナスダック総合株価指数は反落し、前日比23.266ポイント(0.16%)安の1万4258.490で終えた。朝方には7月に付けた年初来高値(1万4358)を上回る場面があったが、11月に急速に持ち直してきた後で目先の利益を確定する売りが次第に優勢になった。交流サイトのメタプラットフォームズやネット検索のアルファベット、電気自動車のテスラが売られた。

29日のシカゴ日経平均先物は下落した。12月物は前日比15円安の3万3275円で引けた。
米経済の減速懸念がくすぶる中、米ダウ工業株30種平均がほぼ横ばいで終えた。日経平均株価が下げたのもあって日経平均先物には売りがやや優勢となった。
シカゴ日経225先物12月限 (円建て)
33275 ( +5 )
シカゴ日経225先物12月限 (ドル建て)
33280 ( +10 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
FTSE100 7423.46(−31.78)
29日のFTSE100種総合株価指数は3日続落し、前日比31.78ポイント(0.42%)安の7423.46で終えた。英国時間29日午後に発表された米国の週間石油在庫統計で、原油在庫が市場予想に反して増加した。原油先物に需給の緩みを意識した売りが増えた場面で、英シェルなどエネルギー大手の株価にも下げ圧力がかかった。一部金融機関が目標株価を引き下げた保険グループのアビバやプルデンシャルのほか、英HSBCホールディングスなど金融関連の銘柄に売りが出たのも、指数の重荷となった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
DAX 16166.45(+173.78)
29日のドイツ株価指数(DAX)は続伸し、前日比173.78ポイント(1.08%)高の1万6166.45で終えた。終値として8月1日以来、約4カ月ぶりの高水準となる。インフレ鈍化を示唆する指標を材料に欧州中央銀行(ECB)が来年にも利下げに動くとの観測が広がった。ドイツ長期金利の低下も背景に、投資家心理が上向いた。
不動産や一般消費財を中心に幅広い業種で買いが入った。DAX指数を構成する40銘柄のうち33銘柄が上昇した。
29日発表の11月のドイツ消費者物価指数(CPI)速報値で、前年同月比の上昇率が3.2%とロイター通信がまとめた市場予想を下回った。同国の一部州が公表した11月のCPIでもインフレ鈍化を意識させる内容があった。
■フランス・パリ株価指数
CAC40 7267.64(+17.51)
フランスCAC40種指数は0.24%高だった。金利動向に敏感な不動産株やハイテク株などを中心に買いが入った。