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【市況】202ドル高 米QT終了の思惑で、米中摩擦には警戒 |
14日のNYダウ工業株30種平均は続伸し、前日比202ドル88セント(0.44%)高の4万6270ドル46セントで終えた。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が量的引き締め(QT)の終了が近いことを示唆した。投資家心理の悪化に歯止めがかかり株式相場の支えとなった。米中貿易摩擦を巡る警戒感から、ダウ平均は朝方には大幅安となる場面があった。
ダウ平均は米中対立への懸念を背景に、取引開始直後に600ドル超下げた。ただ、米銀大手がこの日発表した7~9月期決算がいずれも底堅い内容で、米経済の見通しを巡る楽観が拡大。金融や建設、住宅関連など景気動向に敏感な銘柄を中心に積極的に買われ、ダウは一時450ドル超高まで上昇した。
ただ、トランプ米大統領が取引終盤にSNSで、中国からの食用油購入停止を検討していると表明すると、上げ幅を縮めた。ナスダックの下落幅は一時3ポイント程度まで縮小したが、終盤に再び拡大した。
パウエル議長は14日の講演で、米国債などの保有資産を圧縮するQTについて「準備預金が十分と考えられる水準をやや上回る時点で(QTを)停止する計画だとこれまで表明してきた」としたうえで、「今後数カ月でその水準に近づく可能性がある」と語った。QTの停止が近いとの思惑から14日の米債券市場では長期金利が低下(債券価格は上昇)し、株式相場の支援材料となった。
パウエル議長は米経済について「現在入手可能なデータに基づくと、雇用とインフレの見通しは9月時点から大きく変化していない」と述べた。米国の追加関税で財の価格が上昇している一方、雇用者数の伸びが急激に減速し「雇用の下振れリスクが高まったようにみえる」と指摘した。
米連邦政府の一部閉鎖の影響で雇用統計など経済指標の発表が遅れているが、パウエル議長は「さまざまな公的・民間部門のデータを精査している」とも話した。「政府閉鎖によるデータ不足は10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げを妨げる可能性が低いことを示唆した」といい、追加利下げの思惑が広がった。
大手金融機関が発表した2025年7〜9月期決算では1株利益が市場予想を上回るなど良好な内容が目立った。ダウ平均の構成銘柄ではないが、シティグループやウェルズ・ファーゴが決算発表を手掛かりに大きく上昇した。好業績への期待が高まり、相場全体の支えとなった。
ダウ平均は朝方に600ドルあまり下げた。中国商務省が14日に韓国の造船大手ハンファオーシャンの米国子会社に制裁を科すと発表。ベッセント米財務長官が中国が世界経済に打撃を与えようとしているなどと批判したとも報じられ、米中対立が激化するとの懸念から売りが先行した。
ダウ平均は取引終了直前に伸び悩んだ。トランプ米大統領は14日午後、自身のSNSで「中国が意図的に米国の大豆を購入していないのは、経済的に敵対的な行為だ」と表明した。中国と食用油などの取引を停止することを検討しているとも明らかにした。投稿をきっかけにやや売りが優勢になる場面があった。
ダウ平均の構成銘柄ではアナリストが目標株価を引き上げたキャタピラーが上昇した。オープンAIとの提携を発表したウォルマートも大幅高となった。シスコシステムズやアメリカン・エキスプレス(アメックス)も上げた。
一方、エヌビディアが4%あまり下げた。アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)がオラクルに人工知能(AI)半導体を提供すると発表し、競争が激化するとの警戒感から売りが出た。セールスフォース、アマゾン・ドット・コムは下落した。
ナスダック総合株価指数は反落した。前日比172.907ポイント(0.76%)安の2万2521.701で終えた。

14日のシカゴ日経平均先物は下落した。12月物は前日比25円安の4万6990円で終えた。この日は米連邦準備理事会(FRB)による量的引き締め(QT)の終了が近いとの見方から米ダウ工業株30種平均が上昇したものの、日本の政局不安や米中貿易摩擦の警戒感から日経平均株価は下げており、シカゴ市場の日経平均先物には売りがやや優勢だった。
シカゴ日経225先物 (円建て)
46990 ( +200 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
47095 ( +305 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
14日の英FTSE100種総合株価指数は小幅に続伸し、前日比9.90ポイント(0.10%)高の9452.77で終えた。貿易問題を巡る米中対立への懸念が投資家心理を冷やし、英FTSE100種指数は前日終値を下回って推移する場面が目立った。だが14日の米株式相場が下落幅を縮小するとFTSE100種指数も水準を切り上げ、上昇に転じた。
日用品の英ユニリーバやブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が上げたほか、住宅関連に買いが優勢だった。他方、国際商品市場での銅先物の値下がりを受け、前日に上昇していた英アングロ・アメリカンなど資源の一角に売りが出た。英BPといった石油株が売られた。
FTSEの構成銘柄では、スイス海運大手メディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)による買収話が浮上した格安航空大手イージージェットが8.02%高と急伸。住宅大手パーシモンが2.57%高、住宅大手バークリー・グループが2.39%高で続いた。一方、産業・エネルギー会社のメトレン・エナジー・アンド・メタルズは6.20%安、蒸気システム大手スパイラックス・グループは4.11%安、鉱業大手アングロ・アメリカンは2.80%安となった。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
14日のドイツ株価指数(DAX)は反落し、前日比150.99ポイント(0.61%)安の2万4236.94で終えた。米中貿易摩擦への警戒感が足元で再び強まっており、投資家が慎重姿勢に傾いた。午後に入りフランスの株式相場が下げ幅を縮小すると、DAXも歩調をあわせて下げ渋った。
フランスでは同日、ルコルニュ首相の演説を受けて同氏率いる内閣が存続できそうだとの見方が広がった。早期の総選挙実施などにより、政治情勢が一段と不安定になるとの懸念が後退し、フランス株式相場の下げ幅が縮小した。
個別では、セメント大手ハイデルベルク・マテリアルズが2.14%高、通販大手ザランドが1.43%高、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が1.17%高と上昇。半面、自動車部品大手コンチネンタルは4.30%安、化学品商社ブレンタークは3.25%安、総合電機大手シーメンスは3.15%安と売られた。
■フランス・パリ株価指数
欧州株式市場でフランスの株価指数CAC40は反落し、前日比0.18%安で終えた。