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反発 米政権の関税は想定内、ETFの捻出売りが重荷
東京株式(前引け)=反発 米政権の関税は想定内、ETFの捻出売りが重荷

 
8日午前の日経平均株価は反発し、午前終値は前日比123円61銭高の3万9711円29銭だった。
 
前日の米株安やトランプ米大統領が対日関税25%を表明したことなどを受け、リスク回避モードの地合いが想定されたが、実際取引が開始されると、寄り付きこそ若干売り優勢でスタートしたものの、その後は空売り筋の買い戻しなどが作用して堅調な値動きとなった。
 
トランプ氏は前週に日本の関税率を30%以上に引き上げると示唆していたため、25%の関税率は想定内との見方が聞かれる。米関税政策を巡る過度な懸念が和らいだとして朝安後は幅広い銘柄に買いの勢いが増した。
 
外国為替市場で円相場が一時1ドル=146円台半ばと、前日夕時点から円安・ドル高方向に振れたことも投資家心理を支えた。ロイター通信などによると、トランプ氏は貿易相手国に新たな関税を課す8月1日の期限について「確定しているが、100%確定ではない」と述べ、延期も検討する用意があることをほのめかした。今後の交渉余地が残されていると受け止められたことも株買いを後押しした。非鉄金属や鉄鋼など景気敏感株が多く含まれる業種の上昇が目立った。米関税強化は日本経済の下振れリスクを高めることから、20日投開票の参院選挙後の秋の臨時国会で決定される見込みの経済対策の規模が従来想定よりも大きくなるとの観測も相場を押し上げた面があった。
 
日経平均は下落する場面もあった。8日と10日は上場投資信託(ETF)の運用会社が分配金(配当に相当)の支払いに備え、株価指数先物などに資金捻出のための売りを出す日に当たる。両日で計1兆円台半ばの売り需要が予想されている。売りは取引終了にかけて出ると想定されているが、午後に売りが出ることを前提に需給の緩みを意識した短期筋が先回りで先物を売る動きが出たとみられ、指数の重荷となった。
 
後場の日経平均株価は、プラス圏での推移が継続しそうだ。米国の関税政策について、日本からの輸入品に対する関税率は35%に引き上げられるといったシナリオが市場で意識されていたが、最悪シナリオは免れたと安心感が広がった。
また、8月1日まで交渉余地を残していることも今後の交渉進展期待につながっており、投資家心理にポジティブに働いているようだ。そのほか、今週は国内企業の3-5月期決算発表が増えることから、好業績・好決算銘柄への物色意欲が株価下支え要因となるとの見方もある。
ただ、今週はETF(上場投資信託)の分配金捻出売りが出ることが予想されており、これを警戒する向きもある。総じて、積極的に買い進む材料には乏しく、後場の指数の上げ幅は限定的となる可能性も想定しておきたい。

 
 
東証株価指数(TOPIX)は反発した。前引けは3.85ポイント(0.14%)高の2815.57だった。JPXプライム150指数は反発した。
 
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で2兆57億円、売買高は8億3051万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1019。値下がりは536、横ばいは72だった。
 
業種別では、非鉄金属、海運業、鉱業が上昇する一方で、医薬品、保険業、その他製品が下落した。
 
個別ではレーザーテック、ディスコ、アドバンテストと売買代金上位3傑を占めた半導体製造装置関連がいずれも買い優勢だったほか、フジクラ、古河電気工業などデータセンター関連として人気が再燃している電線株が大きく値を飛ばした。トヨタ自動車、日立、ダイキン、東京電力ホールディングスも堅調。上半期上振れ着地で通期予想を上方修正したネクステージが値上がり率トップとなり、タダノ、オムロンなどが値上がり率上位となった。
 
一方、三井住友などの金融株が軟調に推移。また、東京海上、三菱重工業、ソフトバンクグループ(SBG)、任天堂、信越化、中外薬や塩野義などが下落した。ほか、株式売出実施による短期的な需給懸念が広がった丸井グループが大幅安、GMOインターネット、東京ガス、中外製薬などが値下がり率上位となった。